英語学習の第1歩を踏み出したはいいものの、「まだ右も左もわからない状態からいきなり20ページのアメコミを読むのはちょっと不安…」という人にオススメしたいのが「コミック・ストリップ」と呼ばれる形式のアメコミ。
「コミック・ストリップ」とは簡単に言ってしまえば日本でいう新聞4コマのアメコミ版のこと。日本でお馴染みの「ののちゃん」や「かりあげクン」といった作品みたいに、アメリカの新聞に毎日掲載され、基本的に3,4コマからなる。
日本の新聞4コマと形式が大きく異なる点は、日本が上から下に縦読みするのに対して、コミック・ストリップは左から右に横向きで読むということ。また連載スタイルに関しても、日本の新聞では基本的に1つのシリーズしか掲載しないのに対して、アメリカでは複数のコミックが同時並行で連載していることが多い。さらに日曜日にはコマ数が多い上にカラーの「サンデー・ストリップ」と呼ばれる豪華版が掲載されることも。
で、このコミック・ストリップだけど、新聞に掲載されることから子供も見ることを想定し、言葉遣い含め表現にはかなり厳しいチェックが入る。
表現の検閲自体に関しては賛否両論なものの、誤った文法やスラングのほぼない平易な英語表現を使っているため、少なくとも英語学習にはうってつけの教材と言える。
そこで今回は筆者がオススメするコミック・ストリップを5つご紹介しよう。
MUTTS
まずはこれ。Patrick McDonellによる、猫のMoochと犬のEarlとの交友関係を中心に、飼い主や地域に住む他の動物達との交流を描いた作品。基本的に台詞は1言2言のため、英語表現の優しさという点ではこれがベスト。
連載を集めた合本はAmazonなどでも手に入るが、本作の公式ホームページでも毎日連載しており、アーカイブに行けば2週間前まで遡って作品を読むことができる。
本格的に学び始める前に毎日少しずつ英語に慣れていきたいという方はここから始めると良いかも。
PEANUTS
SNOOPY COMIC SELECTION 50's (角川文庫)
はい、知らぬ者はほぼいないであろうCharles M. Shulzによる作品。ビーグル犬Snoopyとその飼い主Charlie Brownを中心に、子供達の日常を描いた作品。
表現の親しみやすさもさることながら、入手し易さという点では他より群を抜いている。
本作を手に取るならオススメはテーマ別に作品を集めた朝日文庫からのシリーズか、年代別の傑作集になっている角川文庫のシリーズ。これらのシリーズの優れている点は英語のコミック・ストリップが掲載されているすぐ下に日本語訳が載っているという点。最初はコマ内の英語だけを見て、その後に和訳を見て確認という学習が可能だ。訳も谷川俊太郎によるものなので、下手な訳に当たる心配はない。
学習の入り口にはピッタリの教材かと。
GARFIELD
これまた2度の映画化の他、カートゥーンなども頻繁に制作されているため、それなりの知名度を誇る作品。食いしん坊でぐーたらな猫Garfieldとその飼い主Jonのやり取り中心とした日々を描くJim Davisによる作品(ただし現在はDavis以外が作っているらしい)。英語の難易度的にはMUTTSとPEANUTSの間くらい。
合本に関しては、FAT CAT 3-PACKであれば通常の合本3冊分の内容が1冊にまとまっているためちょっとお得かも。また、本作に関しては原作のコミック・ストリップもさることながら、上記の通り映像化作品が他より豊富なため、リスニングや発音のトレーニングをしたいと思った時にも教材が比較的簡単に見つかるのも嬉しい。
CALVIN AND HOBBES
The Essential Calvin and Hobbes: A Calvin and Hobbes Treasury
アメリカでコミック・ストリップの人気ランキングを行うとほぼ必ず1位の座に輝くのがBill Wattersonによるこの作品。空想とイタズラが大好きな6歳児Calvinと、彼の親友であるトラ(の人形)Hobbesとの友情と日常を描いた本作。
Calvinがいたる所で引き起こすトラブルを描きつつ、だが時に哲学的な問いを盛り込んだ内容もあり、子供から大人まで読後の満足度はかなり高い(筆者も幼い頃に本作を購入してから今でもしょっちゅうページを開いている)。
ただし、それに合わせて英語の難易度もやや高めなら文章量もそこそこ。中学レベルの英語力があれば普通に読めるとは思うが、まだ学習開始から日の浅い人にはきついかも。
コミック・ストリップからそろそろヒーロー物など他のアメコミに移りたいかなと思ったあたりで読んでみるのが良いかと。
LIBERTY MEADOWS
Liberty Meadows 1 (Liberty Meadows (Graphic Novels))
普通のコミック・ストリップだと刺激が足りない?
はい、そんな方にオススメなのが本作。
動物保護区域LIBERTY MEADOWSを舞台に動物カウンセラーのBrandy、そんな彼女に恋する獣医のFrank、アヒルのTrumanに小熊のRalphなど人獣入り混じった交流を描くドタバタ作品。
クリエイターのFrank ChoはAVENGERSやHULKなども手がけており、往年のアメリカン・カートゥーンを彷彿とさせる動物達から筋骨隆々としたマッチョ男まで絵の幅が広く、画力という点では圧倒的。
ただパロディを多用したりセクシーな展開があったりと新聞連載の頃は度々修正が施される問題作で、現在は業を煮やしたChoが普通のコミックとして断続的に発表している。
現在発行されている合本はそういった障壁を全て取っ払った無修正版で、詳しくは本ブログでも1冊紹介しているのでそちらをお読み頂きたい。
「無修正版」と言うと何やらいかがわしい印象を与えかねないが、実際に手にとって頂ければわかる通り、いかがわしい内容があっても小学生の下ネタ程度。肝心の英語に関してもそこはそこ、Choもプロなので問題はないのでご安心を。教材として普通にお使い頂きたい。
さて、いかがだったろうか。
ここで紹介したのは数あるコミック・ストリップのあくまでほんの一部だ。他にもサラリーマン向けのDILBERTや、時事ネタも頻発するNON SEQUITURなど、様々な作品があるので、本屋の洋書コーナーで英字新聞を1部手に取り、自分に合ったものを探してみるのも面白いだろう。
追記:以下続編記事