ようやく続き。
英国にいる知己を訪ねていた Hellboy はある日、不思議な3人組に導かれるようにして森深くへ進んでいったところ魔女の集会に遭遇する。王の座をオファーされるもそれを拒否した結果魔女らと対立することとなった Hellboy の前に、やがてかつて彼に片目を奪われた東欧の魔女 Baba Yaga の刺客、不死身の Koshchei が姿を見せる。
ようやくスピンオフである B.P.R.D. に時系列が追いつき、続刊の記事を上げられる本家本元のシリーズ8巻目。今回からメインアートに Duncan Fegredo が参加するようになり、 Mignola はライティングの方に専念。
Fegredo のアートは全体としては Mignola とよく似ているものの、やや造形が丸みを帯びている他、インクの入れ方が細かい。それでも読んでいてすぐにしっくり来たのは Fegredo の絵そのものの魅力であるとか、違和感を抱かせぬ急展開の連続する本巻のストーリーなどもあるだろうが、それ以上にやはり Dave Stewart のカラーによる効果が大きいのだろう。カラーが共通しているとそれだけで違和感が半減する。
以前から何度も言及しているけれどコミックのアートに関してはペンシルが作品の大きな魅力である一方、カラーやインクと言った縁の下の力持ちももっと注目されるべきだと思わないでもない。色調1つ、影の入れ方1つで作品の雰囲気ってガラリと変わるもんだったりするんで。
ストーリーに関して述べると今回はこれまで Hellboy に片目を奪われたことに関して度々恨み節を口にしていたものの、今まで直接手を下しては来なかった東欧の魔女 Baba Yaga が遂に動き出したというか。結局彼女はあくまで後ろに控えて手先のKoshcheiを送り込むのは事実なのだけれど、 Hellboy と Koshchei の戦闘の後ろで Baba Yaga との戦いも同時に行われている感じがよく伝わってくる。
B.P.R.D. を何冊も読んだ後で改めて本作に戻ってくると、蛙のようなクリーチャーを相手に近代的で大規模な戦闘が繰り広げられるあちらに対して、こちらは悪魔や魔女といったフォークロアな相手とパーソナルな戦いを繰り広げており、しっかり作品ごとの棲み分けみたいなものができているのがわかる。これらの事件が同じ世界で起こっているのだと思うと改めて Mignola の作り出した世界観がいつの間にかかなり広くなっていたことを痛感せずにはいられない。
何を相手にし、どこへ向かっているのか全く予想がつかない本シリーズから今後も目が離せない。