鬼才 Grant Morrison による闇の騎士の1大サーガ、その幕引きとは。
Batman Incorporated Vol. 2: Gotham's Most Wanted (The New 52)
遂に世界を新たな混沌の時代へ突入させるべく動き出した Talia Al Ghul 、そして Leviathan 。その起点として Gotham を標的に定めた彼女は洗脳した児童らを暴徒化させると共に、血清を注入して Man-Bat 化した暗殺者達に Wayne Tower を強襲させる。彼女の野望を阻止しようと立ち向かう Batman Inc. の面々も、だが1人また1人と敵の罠に嵌り犠牲となっていく中、 Batcave での謹慎を命じられて燻っていた Damian は再び Robin の衣装を再び身にまとう決意を固める。だがそんな彼を待ち受けていた運命とは……。
Damian は本当に世界を破滅させてしまうのか。 Talia の本当の目的とは。そして一連の事件の背後で暗躍する謎の組織 Spyral 、それを率いる女の正体とは。
ここに Batman Inc. 、最後の戦いが始まる — 。
はい、ようやく辿り着きましたよ2007年から6年にも及ぶ長きに渡ってタイトルを跨ぎながら展開された Grant Morrison による Batman サーガ。まずは彼がその長い旅路の中で闇の騎士を取り巻く世界にもたらした数多くのものに対してただただ感服するばかりである。
本シリーズの立役者は無論 Morrison であるものの、こと今回のシリーズのみに関して述べるなら、同等の賞賛はシリーズでほぼ一貫してアートを担当し続けたペンシルの Chris Burnham 、それにカラーの Nathan Fairbairn にも送られなければならない。
鋭くも重みのあるアクションを描く Burnham の作画と、決して鮮やかではないもののそのシーンごとにピッタリな色遣いを施す Fairbairn のカラーがなければ本作の絶妙なラストは演出できなかっただろう。
こういう言い方をするとグランド・フィナーレにはもっと小綺麗なアートの方がふさわしいのではないかという者も或いはいるかもしれない。確かに Burnham のラフなペンシルにしても Fairbairn のナチュラルテイストなカラーにしても、イラストとしての”見栄えの良さ”という点だけで語るならもっと目に優しいアーティストもいたかもしれない。
しかし、本作は Batman のコミックなのだ。
Batman とは街の暗がりに潜むサイコな犯罪者達を戦う存在だ。そして彼の戦いに”終”の文字は決して訪れない。
こう考えた際に Burnham と Fairbairn によるアートは”それでも戦い続ける”、実に Batman らしい終わりを描き出すことに成功している。 Batman という存在の持つポテンシャルをギリギリまで引き出し、あわや着地に失敗して不完全燃焼のおそれもあった Morrison サーガを再び路地裏の半都市伝説に戻すことができたのは彼らのアートあってのことであるのは間違いない。
……と、アートのことに言及していたらすっかり Morrison のストーリーについて深く語る余白がなくなってしまった。まあ、また副読本読んだ頃に総括とでも称して語ろうか。
取り敢えず今はこの壮大な物語にひとまず幕を引くことにする。