VISUAL BULLETS

アメコミをはじめとした海外コミックの作品紹介や感想記事などをお届け

B.P.R.D. VOL.3: PLAGUE OF FROGS (DARK HORSE, 2004, #1-5)

 いよいよ本格始動。


B.P.R.D.: Plague of Frogs #1

 ニュージャージーで B.P.R.D. が管理する倉庫施設において密かに研究が進められていた巨大な菌状生物。だがそのことを聞きつけて見学を希望しに来たという菌学の権威は、施設の職員を殺害すると生物を解放してしまう。本部は連絡の途絶えてしまった施設内で何が起こったのか調査させるべく、 Abe Sapien らエージェントを派遣するが、早速中に足を踏み入れた彼らの前に姿を現した職員は、だが直後醜い蛙のような化物に姿を変えてしまい……。

 前巻前々巻の地ならしを経て、遂に今回から本格的なストーリーが動き出す HELLBOY のスピンオフシリーズ。後に Plague of Frogs と呼ばれることになる蛙人間達との長きに渡る攻防が幕を開ける。
  1st アークとなる本巻のライターはもちろん本家も担当している Mike Mignola 。今やすっかり摩訶不思議な領域に足を踏み入れてしまった HELLBOY のシリーズ開始当初の雰囲気を彷彿とさせる、ホラーとアクションの両立した作品に仕上げている。
 アーティストは前巻でも言及した Guy Davis 。アクションにやや物足りなさを感じた前巻と違い、本巻では蛙人間の群れとガチンコ衝突。ドンパチも盛り沢山ならLizのパイロキネシスみたいな能力描写も派手に描かれており見応えたっぷりになっている。
 加えて言うなら個人的に蛙達のデザインは大変好み(こいつら自体は HELLBOY の最初のエピソード SEED OF DESTRUCTION で登場しており、元々単純なフォルムということもありデザイン的に特に変わったところはない。強いて言うならやや四肢がたくましくなったか)。ザクとかショッカー団員とか量産系の敵が秀逸な作品は往々にして作品自体もレベルが高いものだけれど本作もその例に漏れずというか。

 また本巻は Hellboy がいなくなった後、新たにフィールド・リーダーとなった Abe Sapien にも焦点が当てられている。本家で登場した際は Hellboy の相方以上の存在としてあまり描かれてこなかった彼だが、自らチームを率いるようになった今回のエピソードでは彼の芯の強さが伺えると同時に、彼のこれまで語られてこなかった生い立ちについても若干触れられ、今後キャラクターとしてさらに深く掘り下げられるものかと思われる。彼をメインにしたスピンオフも何冊か出ているのでそれもそのうち読んでみたいかも。

 さて、そんなこんなでようやく大海原へ漕ぎ出した本シリーズ。難しいと言われるホラーとアクションとのバランスを取りながらどうサーガとして発展していくのか、今後とも注目していきたい娯楽作である。


B.P.R.D.: Plague of Frogs #2


B.P.R.D.: Plague of Frogs #3


B.P.R.D.: Plague of Frogs #4


B.P.R.D.: Plague of Frogs #5