VISUAL BULLETS

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BARRIER (PANEL SYNDICATE, 2016-17, #1-5)

 スペイン語勉強しておくべきだったかな。

 亡くなった夫の牧場を管理する Liddy はある日、飼っていた馬の1頭が皮を剥がされ頭部だけになった状態で道端に転がっているのを発見する。国境の向こうからドラッグを売りにやって来るマフィアの仕業と踏んだ彼女は深夜のパトロールを始めるが、するとやがてホンジュラスから仕事を求めて不法入国してきた青年 Oscar に遭遇する。英語しか知らない彼女と、スペイン語しか知らない彼 — 全く言葉の通じない相手同士の彼らの頭上に、だが突然まばゆい光が降り注ぎ……?

 エイリアンによるアブダクションと米国の不法移民問題に端を発して、米国人女性とホンデュラス人男性、それに宇宙の果てからやって来た謎の生物との間における言葉の障壁( Barrier )と、それを越えたコミュニケーションを描いたライター Brian K. Vaughan とアーティスト Marcos Martin 、そして Munsta Vicente による意欲作。

 まだ Y: THE LAST MAN も終わってないのに昨日の今日で再び Vaughan がライティングを担当する作品を上げるのも短絡的な気がしないでもなかったけれど、たまには出たばかりの旬な作品も取り扱いたかったし、即記事を書きたくなるくらい面白い作品でもあったのでやっつけてしまった次第。

 本作を発表したサイト PANEL SYNDICATE は Vaughan と Martin が中心となって運営しているコミックのダウンロードサイトで、購入する側が自由に価格設定をして(無料もあり)ダウンロードするという新しい試みがなされている。他にも同じクリエイター陣による近未来ノワール PRIVATE EYE やスペイン出身のクリエイター Albert Monteys による UNIVERSE! などもアップされており、少しずつだが着実に成長している今注目のサイトだ。

 で、肝心の本作に関してだがこの作品の特徴的な点は何と言ってもその使用言語だろう。英語とスペイン語とが等しい割合で出現する本作。読み方としては、どちらか(あるいは両方)の言語を知らないまま読み進める方法と、辞書か翻訳機能を駆使しながらゆっくりと読み進める方法とがあるが、まず前者の方法で Liddy や Oscar の身に起こっていることを追体験する形で1度通読した後、再び後者の方法でしっかりストーリーを理解していくというのがおすすめかと。

 ネットやグローバリズムの急速な発展により異文化が混ざり合うようになった現代。その傾向が今後ますます強くなっていくことはまず間違いあるまい。そんな中、いちいち翻訳に頼っていては言葉が通じたところで意思が通じていないなんて本末転倒な結果になってしまうおそれがある。時には言葉がわからないままコミュニケーションに飛び込むことも必要なのかもしれない。
 大丈夫、きっと心は通じる。