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HELLBOY VOL.5 CONQUEROR WORM (Dark Horse, 2001, #1-4)

 ある者にはファースト・シーズンのフィナーレ。別の者にはセカンド・シーズンのビギニング。


分冊キンドル版(Amazon): Hellboy: Conqueror Worm #1

 1939年。当時ナチスで最高の頭脳を持つと謳われていた Ernest Oeming 博士が謎の死を遂げた後、軍部は彼の遺した研究をオーストリアは Hunte 城へ運び込むと、占い師やオカルティストらも混じえて怪しげな実験を繰り返すようになる。危惧した米軍の破壊工作(と謎のクライムファイター Lobster Johnson の活躍)により研究は無に帰したかのよう思われていた……が、それから60年後。かつてナチスが打ち上げたと思しき鉤十字入りの衛星が Hunte 城に向かっていることを察知した B.P.R.D. は Hellboy 、そしてホムンクルスの Roger をその着地点へ送り込むことを決める。

 ナチスのオカルト・ア・ラ・カルト。クライムファイター Lobster Johnson 。改造ゴリラ(10号!)に芋虫系妖怪変化。いやあ、惚れ惚れするようなこれぞアメリカン・エンターテイメント。
 ストーリーもストーリーならアートについても LJ のユニフォームや Conqueror Worm の気色悪さ、またこいつの息吹で異形に姿を変えられたモブキャラの猫背っぷりとか、かなりツボなところが多い本巻で、非常に私好みな1冊でした。
 
 前回までである程度” Beast of Apocalypse “としての Hellboy を巡る冒険に一段落つき。今回からは謂わば新章開幕となるのだろうけれど、ロシアの怪僧 Rasuputin とかは今回まで出てくるし、それに本エピソードをもってようやく Hellboy が B.P.R.D. を離れるんで、話の区切りという観点ではむしろ本巻の方が幕っぽくなくもない。
 ただ、ここから Hellboy の新たな方向性が打ち出されると共に、 B.P.R.D. や LOBSTER JOHNSON といったスピンオフが生まれて世界観がぐっと広がったことを考えると、個人的にはここからをシーズン2とした方がワクワクするんだけど、この感覚わかる人いるか知らん。

 記憶が正しければ本シリーズで第2次世界大戦を引きずるのも本巻までなので、ガスマスクであるとか電極の刺さった頭であるとかといった20世紀なもモチーフも今回まで。 Hellboy 以外の登場人物におけるトレンチコート率が少々下がってしまうのはちと残念(いや、そんな極端に減りもしないか……?)。

 さてさて、そんなこんなで1から読み直してきた Hellboy シリーズもようやくはるか前に1本だけ記事を上げた B.P.R.D. シリーズに追いつき。ここからどんな順番で両シリーズ(及びその他のスピンオフ)を進めていくか。若干嬉しい悲鳴を上げながら今後も引き続き Hellboy の奇妙な冒険を追っていく所存ですのでどうぞよろしく。


分冊キンドル版(Amazon): Hellboy: Conqueror Worm #2


分冊キンドル版(Amazon): Hellboy: Conqueror Worm #3


分冊キンドル版(Amazon): Hellboy: Conqueror Worm #4


原書合本版(Amazon): Hellboy Volume 5: Conqueror Worm (2nd edition)