VISUAL BULLETS

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BATMAN AND ROBIN: BATMAN VS. ROBIN (DC, 2010, 10-12)

 ダンディでミステリアスな方ってホント魅力的。


本記事で紹介する内容含む原書合本版(Amazon): Batman and Robin: Batman vs. Robin (Deluxe Edition)

  Bruce Wayne は生きている — 真実に辿り着いた新生ダイナミック・デュオはさらなる手がかりを求め、 時空の狭間に囚われた Bruce から送られてくるメッセージが散りばめられた Wayne 家の屋敷を捜査する。だがパズルのピースを集めるのに夢中となる Dick の背後で、母に負傷した脊髄を治療して貰った Damian の体に突如異変が起こる。
 一方その頃、 Gotham を訪れていた推理小説家 Oberon Sexton は Batman を狙う謎の組織を裏切ったことから 99 Fiends なる暗殺者集団から狙われる羽目に……。

 リーフで月々読んでいた頃はあまり意識しなかったものの、改めてまとめ読みしてみると結構展開がスピーディであることに気付かされました、 Grant Morrison による新生 Batman & Robin の活躍を描いた本シリーズ。
 アーティストは本連載でも以前『 JUDGE DREDD: HONDO CITY LAW 』の記事で取り上げた(と思う) Andy Clarke 。彼の線を多用する陰影の付け方はアメコミの作画がフルデジタルに移行する前の手描き時代を彷彿とさせてちょっと懐かしいと同時に、インクやカラーなどは完全にデジタルであるため一風変わった仕上がりのアートとなっている。

 今回のエピソードではシリーズ開始初期から登場していた謎の(文字通り)覆面作家 Oberon Sexton がず、ず、ずいと話に食い込んできて、ラストではその正体も明らかに。 Question や Mr. Knight など、こういう「紳士服+覆面」キャラに少々フェティッシュな私は当時ウヒャウヒャ言いながら読んでいた記憶があります。得物がシャベルというのも大変グッド。

 前のエピソードもやや(悪い意味ではなく)時代錯誤な感があったが、今回も雰囲気としてはからくりだらけな Wayne 屋敷における謎解き部分にシルバーエイジの匂いが感じられる。 Morrison がキャラクターにしろギミックにしろこういう過去ネタを引っ張ってきて現代風にアップデートさせるのを十八番としていることは既に言うまでもないと思うが、今回もまた見た目さえ変えてやれば一度廃れたコンセプトでも現代に蘇らせることは十分可能という彼の温故知新な手腕を見せつけられた。このあたりはそのうちがっつりと分析してみたいところですな。

 それにしてもリーフ内の広告とか見ると、この時点でもう RETURN OF BRUCE WAYNE を読み始めてなきゃならんのか。厄介な、 FINAL CRISIS の記事もまだなのに。 RED ROBIN も少し扱いたいんだよなあ……。
 えー、そんな感じでこの辺は時系列がややゴチャッとしていて本連載でも記事によっては時間軸を前後する場合がございます。悪しからず。