VISUAL BULLETS

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RUNAWAYS: DEAD MEANS DEAD (Marvel, 2006, #19-21)

喪うことと、愛することと。


分冊キンドル版(Amazon): Runaways (2005-2008) #19

 Gertを失い、悲嘆に暮れるチーム。他の者達が互いに寄り添うことで折り合いをつけようとする中、最年長者でありGertの恋人でもあったChaseだけは彼女から引き継いだOld Laceと共にチームの前から姿を消す。かつて両親達が儀式を執り行う際に使用していたPrideの魔導書を持ち出した彼は、Gertを蘇らせて貰おうと古の神々との接触を試みる。
 一方その頃、残されたチームは街に異変が起こったと知りすぐさま駆けつけるが……ビルよりも巨大な怪獣に一体どう立ち向かう!?

 Gertの死という決定的局面を経て、今回と次の話は謂わばエピローグといったところ。メインは当然ながらエンバー各々による弔いだが、本シリーズらしい派手でコミカルなアクションのあるおかげでそれほど湿っぽくならずに済んでいる。
 肌を重ねるNicoとVictor(果たしてUltronは彼に受精能力を与えたんでせうか)、Old Laceの新たな主人となったChase、あるいはこれまであまり会話シーンのなかったチームの足で人工知能を有するLeap FrogとMollyのやり取りなど新たな関係も生まれており、なるほど今後に向けた新局面とはこうやって積み上げ始めるものなのかと大変勉強にもなりました。

 個人的に今回最も注目したのが、前回のストーリー中盤でチームに復帰したKarolinaと、婚約者のXavin。許嫁同士、故郷間の和平という事実上の政略結婚として始まった彼らの関係だが、結局滅ぼしあわずにはいられなかった母星から逃げて地球へやって来てもなお一緒にいる彼女らの姿からは、作中で描かれることのなかった絆の深まりがあったことが見て取れる。
 またKarolinaは精神的な成長著しく、地球を発つ前は自らの出自や同性愛者としての性に戸惑ういかにもティーンエイジャーといった感が強かったのに、今や仲違いするメンバーの仲裁をしたり、軍人気風の抜け切らないXavinを優しく導いたり。「この世界をよくしてみせよう」と意気込む恋人に「それはヴィランのすること。私達は1人ずつ変えていくの」と諭す姿はまさに母親。精神年齢も多分チームの中で一番上かと(何気に2番目はMollyだったりする)。

 失う時は派手で一瞬なのに対し、築き上げる過程というのは地味で長い時間を要する。だからこそ、それに目を配り、重んじなければいけない。
 まだ中身に関してあまり情報が出回ってない新シリーズに関して何度もとやかく言うのはあれだが、プロモ・アートにKarolinaはいてもXavinの姿がなかったことにまた不安を感じずにはいられなかったなあ……。


分冊キンドル版(Amazon): Runaways (2005-2008) #20


分冊キンドル版(Amazon): Runaways (2005-2008) #21


本記事で紹介した内容含む原書合本版(Amazon): Runaways Vol. 7: Live Fast