人々を守るスーパーヒーローであると同時に、人々と共に生きる市民であるということ。
原書合本版(旧版なのでこれから買う方は以下に掲載する合本の方がおすすめ)(Amazon): Flash, The: Blood Will Run
自らの正体を明かしながら、市や人々の助力もあり Flash としてのスーパーヒーロー活動と日々の生活を両立させる青年 Wally West 。ある日、謎の集団に襲撃されている自動車整備工場へ駆けつけた彼は、そこでかつて恋愛関係にあった警察官 Julie Jackam と再開する。さらに同じ現場へ姿を現したのは Frankie Kane a.k.a Magenta — 彼女は Wally がまだ Kid Flash だった時のガールフレンドであると同時に、磁力を操ると性格が一変してしまうという厄介な能力の持ち主だった。刻一刻と自体は混迷していくが、これは事件の始まりでしかなかった。翌日、 Flash は何者かの手によりかつて自分が救出した市民が次々と殺害されたことを知る……。
DC のトップランナー Geoff Johns による Flash の伝説的なランの第2章。前章でその速さと伝統という2つの最大要素を一旦奪い去ることで改めて彼がまずどういう”人間”なのかということを見つめ直した上で、今回からは”ヒーロー”として彼の活躍をフルスロットルで描き始める。
太めの線を好んで使うアーティスト Scott Kolins とカラリストの James Sinclair による淡い色遣いによる絵柄については昔、別の FLASH 作品で見た時に正直そのカートゥーン臭さに苦手意識を抱いたものの、今回はそれほど気にはならなかった。アートに差があるのか、ストーリーのおかげなのか、はたまた単に自分の好みが変わっただけなのかはよくわかりません(一番可能性が高いのは最後のやつだけど)。
今回登場するヴィランは Wally West がまだ Kid Flash で若干チャラチャラしていた頃に付き合ったことのある元カノ Magenta 、それに Flash と同じく雷撃により特殊能力を手に入れたと同時に天啓を受けただかで Flash を崇める新興宗教を立ち上げてしまったオッサン Cicada。
似たようなオリジンを持ちながら、市民と共に生きることを重視する Flash と、人の上に立とうと目論む Cicada との対比が中々興味深かったと同時に、それを本章のエンディングにおいて Wally の成長の糧にする Johns のストーリー構成能力は改めてすごいなと思い知らされた。
この時期の Flash は世間に正体を明かしており、少し特殊な状況に身を置いている。他のヒーローならあるいは追われたり、またはセレブ扱いされたりするところだが、 Flash に関してそういったところはない。多少あれこれ融通を利かせて貰うことこそあるものの、後は一般市民とそう変わらない生活を送ることができている(少なくともこの時点では)。それは Flash 自身が1人の市民として皆と共に生きる決断を下したことに加え、他の市民達が彼を受け入れることを決めたことで実現されたものだ。彼にとって人々は単なる庇護の対象ではなく、共に並び歩く仲間であり家族なのだ。
本章は Flash がどう他のスーパーヒーローと異なるか、それを一般市民との関係性という面から示したストーリーであるといえる。
本記事で掲載した内容含む原書合本版(Amazon): The Flash By Geoff Johns Book One