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THE PUNISHER: IN THE BEGINNING (Marvel, 2004, #1-6)

 最凶の仕置人、 Punisher — その最も驚くべきことは彼が波平と同い年だということである。


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 大物マフィア Cesare 一家のパーティを襲撃し、ファミリーを壊滅状態に陥れた Frank Castle a.k.a The Punisher 。司令塔を失ったファミリーは過去に組織を追放された問題児 Nicky Cavella を呼び戻し Punisher への復讐を計画する。だが彼らとは別に、 Cesare 家へさらなる追い打ちをかけようとする Punisher を密かに監視する者達がいた……。

 おそらく現在 Punisher のコミックと言えば多くの方が想像するのは2004年に始まったこの伝説的シリーズかと。「人がゴミのようだ!」と仰られたかの大佐もびっくりな勢いのバイオレンス量は大人向けインプリント MAX ならでは。

 ライターは以前からこのブログで紹介している Punisher 作品の WELCOME BACK, FRANK や BORN と同じく Garth Ennis 。 Rick Remender のランなども読んでみたいという気持ちがある一方で、何よりまずは彼のランを読み切ってしまいたいという一心です、はい。

 ペンシルを担当する Lewis LaRosa は本作含め、この頃は Marvel 作品が多かったものの、現在は Valiant を主な活躍の場としている模様(新生 Valiant って Marko Djurdjevic といい、何故かこの手の元 Marvel 関係者が多い)。 BLOODSHOT などを担当しているようだが本作におけるアクションシーンを見れば納得。力任せな暴力と銃の滅多打ちによる戦闘描写は一般的なスーパーヒーローとは一線を画す荒々しさに満ちている。個人的に大好きなのは解放された Frank がドアの近くにいた襲撃者の1人の頭を両手で挟み込むように掴んで壁際にいるもう1人の顔面に思い切り叩きつける、1ページまるごと使ったコマ。もうこれだけ拡大コピーして部屋に飾りたいレベルっす。

 人の命が紙くず並に消費されるそんな本作にスーパーヒーローなんて存在の入る余地がある筈もなく、 BORN 同様作中で Marvel ユニバースを匂わせる描写は皆無。一応 Marvel ユニバース側はこのランも世界内の出来事として扱っているようだが、いつまでも30〜40代の若々しさを保つ他シリーズの Punisher (及びその他のヒーロー達)と違い、ここに登場する彼は BORN の設定(というかオリジナルの設定)を引き継いでベトナムにも従軍した1950年生まれ。
 磯野波平と同い年の男がほんの僅かな時間で42人のマフィアを蹴散らしたと考えて貰えればその凄まじさが理解できるかと思う。

 唯一、過去のシリーズとの繋がりとして昔 Punisher のサポートをしていた Micro なる人物が登場する。だが暴力だけが物を言う本作においてやれハッキングだのやれ武器調達だのといったテクニカルな技能は何ら意味をなさない。むしろ本作のエンディングからはそういった手練手管など拳と鉛で叩き潰すとでもいわんばかりの Ennis からの意思表示さえ感じられた。


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