VISUAL BULLETS

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『RUNAWAYS VOL.2: TEENAGE WASTELAND』(Marvel, 2003-04)

 親はどこまで他人だろう。
 確かに親は親だし、子供は子供だ。でも、親がいなければ自分などとうの昔に死んでいただろうし、逆に自分を授かったことは親の人生において大きな転換期となった筈だ。
 子はある意味で親という物語の続編だ。同じく、親は子の原点と呼べるかもしれない。
 それでもやはり、別々の存在には違いない。


原書合本版(Amazon): Runaways, Vol. 2: Teenage Wasteland

 街を支配するスーパーヴィランな両親共から逃げ出した6人の子供達。親の悪行を自分達なりに償おうと決めた彼らは手始めに偶然行き会ったコンビニ強盗を撃退するが、逃げ遅れたうちの1人が自分達と同年代の少年であることを知ると、両親の片棒を担がされるのはもううんざりだという彼を自分達のチームに迎え入れる。

 引き続き、良い子でクソガキな6人組のハラハラワクワクな逃避行を描くシリーズ、今回は『VOL.2: TEENAGE WASTELAND』でござい。
 合本に含まれているのは#7−10『TEENAGE WASTELAND』(上記あらすじはこれ)、それにCloak & Daggerの2人組がゲスト出演する#11−12『LOST AND FOUND』。

 ライターは変わらずBrian K. Vaughan。よくよく考えてみるとそれほどストーリーは進んでいないものの、愉快な展開を次々と繰り出して読む者を繋ぎ止める手腕はお見事。個人的にはモノローグがないと話が映像的になるというのも1つの発見でした。

 アーティストについて、前者の物語はVol.1と同じAdrian Alphonaだが、後者はこちらもまた『MS. MARVEL』のアートを手がけ、現在日本に在住していることでも知られるTakeshi Miyazawaが担当。Miyazawaはティーンを描くのが非常に上手。下手なアーティストが年頃の少年少女を描くと子供っぽ過ぎるか大人っぽ過ぎるかに偏りがちだけれど、彼の絵柄はティーンエイジャーをしっかりとティーンエイジャーらしく見せている。

 親から逃げるので前頭葉を働かせる余裕がなかった前巻と違い、今巻では取り敢えず当面の隠れ家も確保して諸々と考える時間を得たことにより、各々の内面や互いの関係性が浮き彫りとなる。修学旅行モードから寮生活モードに突入してホームシックがキックインするメンバーもちらほら。

 一方で親の方も親の方で娘や息子の行方が依然として不明であることに苛立ちを募らせたり、ともすれば彼らが強敵を倒したのを聞くとちょっと誇らしくなったりと、街を裏から支配していることさえ度外視すれば非常に健全なパパさんママさんです。

 親子の絆はそう簡単に断ち切れるものじゃないけれど、親がやっていることは度し難い — 本作に限らず親子ドラマだとしょっちゅう取り上げられるネタだが、現代ドラマなんかだと対立する双方の主張がそこそこ正論だったりして、どっちが勝っても後味の悪さが残る場合が多い。
 そこを本作では親をスーパーヴィランにしてしまうことで「親=悪、子供=善」と分かりやすい構図にし、結果として物語を質の良いエンターテイメントに仕立て上げている。
 真っ黒な全身タイツに身を包んだ親が「大人になるってことは汚いことも〜」と主張したところで読者から共感は得難いだろうし、そんな彼らを子供達がギャフンと言わせたところで後味の悪さはさほどない。

 結局のところ、生物学的に言えば親と子は別々の生物だ。そういう意味じゃ他人である。
 でも、親には感謝していることも事実だ。いつか自分に子供が出来た時は同じくらいの愛情を向けてやりたいとも思う。
 案外、親子の絆なんてそう思えるくらいで十分なのかもしれない。


原書合本版(Amazon)(何か画像白抜きになってるけど……): Runaways Vol. 2: Teenage Wasteland

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