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実写化発表! DC 原作『スワンプ・シング』って?


Swamp Thing Vol. 1: Raise Them Bones (The New 52)

  DC がネット配信サービス” DC UNIVERSE ”のオリジナル作品として2019年に実写化することを発表した『スワンプ・シング』。
 過去にも実写化経験のあるスワンプ・シングはDCのホラー界を代表する存在で、今度始まる JUSTICE LEAGUE DARK の新シリーズにもメンバーとして登場する人気キャラクターだ。

 だが海外では有名なスワンプ・シングも日本だと単行本が1冊出ているに過ぎないということもあり、認知度はイマイチ…。
 そこで今回の記事ではスワンプ・シングをわかりやすく紹介してみよう。

HOUSE OF SECRETS#92


House of Secrets: The Bronze Age Omnibus Vol. 1

 ウルヴァリンの生みの親としても知られるライター Len Wein 、そしてホラーアートの巨匠 Bernie Wrightson の手により生み出された”スワンプシング”というキャラクターは、1971年に刊行された DC コミックスのホラーアンソロジー誌 HOUSE OF SECRETS #92 にてデビューする。

 この時の短編は自分の妻に横恋慕した同僚の手で殺された研究者アレックス・オルセンが薬品を浴びて沼に入ったところ、マック・モンスター(苔や汚泥の塊みたいな怪物)として蘇り、復讐を果たすという内容だった。

 これに対する反響が大きかったことから DC は Wein らにシリーズ化を打診。20世紀初頭が舞台だった短編から現代に時を移し、ややスーパーヒーロー風にリメイクしたのが現在我々のよく知るスワンプ・シングだ。

1st SERIES

 優秀な植物学者だったアレック・ホランドは砂漠に緑を甦らせる薬品の開発に取り組んでいたところ、完成が間近に迫ったところで研究を盗もうとしたスパイに仕掛けられた爆弾の被害に遭ってしまう。その拍子に新薬を頭から被った彼は火だるまになったまま、近くにあった沼へ飛び込む。やがて這い上がったアレックは全身緑に覆われた巨躯の怪物に変貌していた。
 彼は自分の殺害に関与した者達へ復讐しながら、時に社会を脅かす悪と戦う。

 …というのが第1シリーズのあらすじ。

 刊行当初こそ歓迎されたスワンプ・シングのオリジナルシリーズは、しかし Bernie Wrightson がアートから外れ、次に Len Wein がメインライターから編集者に近い立場へ後退した頃から徐々に人気が低迷。ホラーよりは SF かファンタジーに近い作風になり、キャストや設定も複雑化していく中、 #24 で一度打ち切りとなる。 

Alan Moore

 1982年、最初の実写化映画に併せてコミックでも復活したスワンプ・シングだが、この新シリーズも当初は売れ行きが芳しくなかった。
 やがて打ち切り必至となった1984年、 DC はどうせ終わるならと当時無名だった1人のイギリス出身ライターにシリーズを預けることを決める。

 ライターの名は Alan Moore 。

 物語に着手すると Moore はまずそれまで複雑化していたスワンプシングの設定や人間関係をすっきりさせることで話を作りやすいような環境を整える。
 その設定改変の最たるものが、それまでアレック・ホランドが沼の力で変身した存在だと思われていたスワンプシングを、単にそうだと思いこんでいたに過ぎない文字通りの怪物にしたこと。
 このオリジン変更は当時の読者を大いに驚かせた。
 
 やがて地盤固めを終えた Moore はさらに環境問題や生命倫理をテーマに据えたり、全ての緑を司る”グリーン”という存在を世界観に加えたりしてシリーズを重層的かつ壮大な物語に仕立て上げる。宿敵アントン・アーケインの姪アビゲイルとの『美女と野獣』的恋愛模様も好評を博し、当時まだコミックス・コード・オーソリティ( CCA )による業界の検閲体制が厳しかった中、それを完全に無視した大人向けなストーリーテリングは業界に革命を起こした。

 そんな Moore がメインライターを担当した SAGA OF THE SWAMP THING #21- #64 は現在でも名作中の名作として語り継がれ、アメコミファン必読の作品となっている。

 ちなみにジョン・コンスタンティンもこの時期に初登場した。


John Constantine, Hellblazer Vol. 1: Original Sins

 

NEW52

  Alan Moore が離脱して以降もスワンプ・シングは時にシリーズを新しくしながら Grant Morrison 、 Mark Millar 、 Brian K. Vaughan といった著名クリエイターの手を渡り歩いた。


Swamp Thing by Brian K. Vaughan Vol. 1(この第3シリーズではアレックの娘テフェが主役となった)

 
 長い歴史の中で VERTIGO レーベルで主に活躍したことからDCユニバースとの関係が曖昧になってしまったスワンプ・シングだが、2011年に起こったリブート NEW52 の新シリーズにおいて再び DC ユニバースに組み込まれる(正確にはその少し前から復帰していたけれど)。

 この時の第5シリーズを担当したライター Scott Snyder はそれまでの歴史を踏襲しつつ、設定を再び改変。スワンプ・シングは今一度沼の力で甦ったアレック・ホランドが”グリーン”の力で変貌した存在となって現在に至る。

ABILITIES

 
 あらゆる植物の化身ともいうべきスワンプ・シングには様々な能力が備わっている。自分の大きさや形を変えることは勿論、一箇所から別の場所に生え変わることで長距離を短時間で移動したり、体を失っても近くにある植物を通して再生することなどもできる。地球から遠く離れた星で青い植物体として復活したことも。

 また、スワンプ・シングの体に生る実には LSD のような幻覚作用があり、食した者はスワンプ・シングと精神的に繋がることで精神の深い場所まで潜ることができる。人によって甘美な体験になることもあれば、狂気の光景と対峙することも…。

THE GREEN

 ”グリーン”とは前述の通り世界中の緑を司る概念的存在である。あらゆる植物と繋がっている”グリーン”は最高意思決定機関である”樹の評議会”を通して、動物を司る”レッド”、死や腐敗を司る”ブラック”あるいは”ロット”らと拮抗しながら世界の均衡を保っている。
 ポイズン・アイヴィーなど DC ユニバースで植物に関連する連中も基本的にこの”グリーン”と繋がっている。
 そしてあらゆる緑の守護する者として歴史の中で常に1人いなければならない存在 — それがスワンプ・シングなのである。
 アレック・ホランドは勿論のこと、最初にコミックデビューを果たしたアレックス・オルセンなどもこの”グリーン”に選ばれた守護者として活躍した。
 なお NEW52 において、過去に自らをアレックだと思いこんでいたスワンプ・シングは本物の彼が蘇生するまでの代役として”グリーン”が生み出した存在だとされている。

RECOMMENDATION


 スワンプ・シングの原作コミックをこれから読み始めたいという人には大きく3つの入口がある。

1. SWAMP THING: THE BRONZE AGE


Swamp Thing: The Bronze Age Vol. 1

 始まりも始まりの黎明期。デビュー作である HOUSE OF SECRETS#92 に始まり、 Len Wein や Bernie Wrightson が手がけたファーストシリーズ。メインキャストはほとんどこの時期に出揃うものの、シリーズ後半になると話がやや複雑になり、今では棄却された設定もあるため要注意。

2. SAGA OF THE SWAMP THING


Saga of the Swamp Thing Book One

  Alan Moore が手がけるセカンドシリーズ#21から#64。前述の通りそれまでの設定を一新しているし、何より完成度の高さという面からも個人的に一番オススメな入り口。ただし、 Moore 特有の凝った語り口が全開なためある程度英語力を要するかも。
 2019年の新たな実写版もこれを原作として使用する可能性が高い。1巻だけなら邦訳版もあったかと。

3. SWAMP THING BY SCOTT SNYDER


Swamp Thing By Scott Snyder Deluxe Edition (The New 52)

  NEW52 から始まった新シリーズ。一番最近に近いところから始めたいという方にオススメ。手っ取り早く(コミックの)現状に追いつきたいという人は、軽くウィキなどを読み込んだ後にこれを読めば大体イケるかと。



 以上がスワンプ・シングに関する基礎知識。2019年の最新シリーズまで待ちきれないという人は是非コミックで彼の活躍を読んでみよう。