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スーパーマンはいかにして赤いトランクスを取り戻したか?


Action Comics: 80 Years of Superman Deluxe Edition

『ショーツがないと……とにかく彼じゃないの!』

 — 『 ACTION COMICS #1000 』より


 先日『 ACTION COMICS 』が1000号に到達するというかつてない偉業を成し遂げた世界最初にして最大のヒーロー、スーパーマン
 その功績自体も勿論喜ばしいが、ファンの間ではある変化も話題になった。
 
 それはスーパーマンのコスチュームに真っ赤なショーツが復活したことである。
  NEW52 以来長らく失われていた赤パンの再来に多くのファンを歓喜した。

  Brian Michael Bendis による『 MAN OF STEEL 』も刊行されてリバース時代に1区切りついたことだし、今回の記事では新時代の象徴(?)であるこの赤パンの喪失と復活の歴史を眺めてみよう。

原点


Superman: The Golden Age Vol. 1 (Superman The Golden Age)

 そもそもスーパーマンは何故真っ赤なパンツをスーツの外側に履くようになったのか?
 スーパーマンのコスチュームデザインには大きく2つのものが影響を与えたとされている。

 1つは彼のデビューした1930年代前半に大流行していたサーカス
 恐慌時代にも関わらず人気だったサーカスは、この頃にはそれを題材とした映画なんかも劇場で上映されるようになり、米国民の間に広く浸透していた。
 スーパーマンを生み出した Jerry Siegel Joe Shuster はこれらに登場する怪力男空中ブランコの曲芸師らが来ているカラフルなレオタードスーツをスーパーマンのコスチュームの参考にしたと言われている。

 もう1つの影響は同じく30年代、スーパーマンに先立って登場し人気を博していた「バック・ロジャース」「フラッシュ・ゴードン」といったキャラクター。彼らは頻繁に衣装を変え、軍服のような衣服を身に着けていることもあれば、肌にフィットした感じのスーツを身に着けることもあった。
 そんな彼らのぴっちりぱっつんな時のスーツデザインからもスーパーマンのデザインは影響を受けているとか。
 
 現在の感覚では突飛にも思えるレオタードの上に赤パンツという出で立ちは、実は当時かなりトレンディなデザインだったのだ。
 
 ちなみにデビュー時のデザインでは赤パンも今のようなブリーフよりもトランクスに近い。

NEW 52 消えた赤パン

 時代は一気に進み、2011年。
 DCはこんがらがった歴史や人間関係を一度すっきりさせるため、『 FLASHPOINT 』というイベントを利用して世界観をリブート。この” NEW52 ”と呼ばれる新たな世界ではスーパーヒーローのほとんどが21世紀になってから登場したという設定に変わり(以前は第2次世界大戦前後からごろごろいた)、それに合わせてヒーロー達の容姿やオリジンにも変更が加えられた。

 ちなみに『 FLASHPOINT 』以前の DC ユニバースは”ニューアース”、以後の DC ユニバース( NEW52 )は”プライムアース”と呼ぶ(はい、ここテストに出るよー)。
 
 さて、そんなわけでスーパーマンもコスチュームチェンジとなったわけだが、 Jim Lee による新たなスーツ・デザインには襟があったり、溝が入っていたり。しかも……


Justice League: Their Greatest Triumphs

「あ、赤いパンツがない!」

 そう、この新たなスーパーマンからは赤いパンツが失われていたのである。

 このことはファンの間で大きな物議を醸した。

「いいじゃん。赤いパンツ外に履いてるって時代に合わないし」と好意的に捉えるものもいたが、他方で「何言ってんの!パンツを外に履くのは75年以上に及ぶ長い歴史で培われたきた伝統だろ!」という方も多数。

 これには Lee によるデザインがややメカメカしく90年代臭いということもあったのかも知れない。『 JUSTICE LEAGUE 』でお披露目となったそちらのスーツには苦言も多かった一方で、活動初期のスーパーマンを描いた『 ACTION COMICS 』に登場するジーンズにTシャツというカジュアルな衣装の方は「ブルース・スプリングスティーンみたいで良いじゃないか」と結構ウケが良かった模様。


Superman - Action Comics Vol. 1: Superman and the Men of Steel (The New 52) (Superman - Action Comics Volumes (The New 52))

 何にせよ以降の NEW52 時代、スーパーマンは基本的にこのコスチュームだったものの、新コスチューム否定派の数は日に日に増えていった。

REBIRTH 赤いパンツを取り戻せ!

 話がやや複雑になるのはここから。

 まず2015年に起こった『 CONVERGENCE 』という事件。ブレイニアックとテロスという2人のヴィランの差金で様々な世界のヒーロー達が衝突するというこの事件において『 FLASHPOINT 』前のニューアース版スーパーマンが登場。


Convergence: Flashpoint Book One

 無論、赤いパンツを履いていた。

 このスーパーマンは妻のロイスとの間に息子が生まれたりして読者から中々好評を得たものの
 
「どんなに良くても結局これは今はなき世界のスーパーマン。メインは未だにあの溝入りスーツなんだよなあ……」

 そんなファンの嘆きが編集部に届いたのか。
 やってくれました DC 。

 ここから段階を踏んでスーパーマンは再び元の出で立ちに戻り始める。

 まず第1段階。
 プライムアースで活躍していた NEW52 版スーパーマンが『 DARKSEID WAR 』で惑星アポカリプスの火炎口に落ちたことなどの影響により死亡(『 THE FINAL DAYS OF SUPERMAN 』)。
 そこで『 CONVERGENCE 』後、このプライムアースに家族と共に来て隠遁生活を送っていた先のニューアース版スーパーマンが現役復帰する。


Superman: Action Comics: The Rebirth Deluxe Edition Book 1 (Rebirth)

 この交代劇によりスーパーマンのコスチュームからメカっぽさが失われ、襟や溝が取り除かれた。 
 しかし一方でブーツは青くなり、さらに『 CONVERGENCE 』では赤かったパンツも何故か青いまま……。


 次に第2段階。

『 SUPEMAN REBORN 』というストーリーで死亡したプライムアースのスーパーマンと現在活躍しているニューアースのスーパーマンとが、実は『 FLASHPOINT 』で生じた時空のねじれにより分裂してしまった同一人物であることが判明。 Mr. Mxyzptlk との戦いを通してこれら2つの存在は融合し、スーパーマンの歴史が統一。


Superman Reborn (Rebirth) (Superman Reborn: DC Universe Rebirth)

 これにより青かったブーツは赤くなった!だが、パンツは……

 ……青いまま。

ACTION COMICS #1000 復活!赤いパンツ

 
 徐々に NEW52 の影響が薄れ、元のデザインに戻りつつあったスーパーマン。
 そして遂に第3段階として今年の1月、『 ACTION COMICS #1000 』のカバーが公開された。


Action Comics #1000: The Deluxe Edition

 そこに描かれたスーパーマンは赤いパンツを履いていた。

 当初単なるヴァリアントカバーではないかという見方もあったが、 DC 側がこれを正式なコスチューム変更だと報じると待ち望んでいたファンは狂喜乱舞。ツイッター上では「 #THETRUNKSAREBACK (トランクスが帰ってきた)」というハッシュタグが作られ、 DC もこれに乗じてイベントで大量の赤いパンツを配布するという興奮ぶり。
 実際に4月に刊行された『 ACTION COMICS #1000 』でも全ページに渡ってスーパーマンは赤パン姿で活躍しており、これまた話題となった。
  みんなそんなに赤パンツ好きだったのね……。

 現時点で何故彼が赤いパンツ姿に戻ったのか作中の説明はされていないものの、 Brian Michael Bendis が担当したパートに登場するモブの女性店員2人の会話から察するに青パン時代がなかったことにされているわけではない模様。
 あるいは今後現在刊行中の『 MAN OF STEEL 』やそれに続く『 ACTION COMICS 』『 SUPERMAN 』で改めて説明があるのかもしれない。ないかもしれない。


 私自身は赤いパンツを履いたスーパーマンが好きなのでこの変化は大歓迎だ。
 しかし中にはこれをダサいと思う人も少なくないだろう。実際、掲示板などを覗くと否定的な意見も見受けられる。
 おそらく今後も肯定派と否定派の議論は続けられるだろう。決定的な結論がでることはおそらくあるまい。

 だがこのことは裏を返せばスーパーマンというキャラクターに対する世間の関心の高さを示している。
 それは NEW52 時代のデザインを担当した Jim Lee も重々承知しており、「赤いパンツが戻ってくることは最初からわかっていたし、今後も再び消えることがあるだろう」という旨の発言をしている。
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 今後もスーパーマンのデザインは変わったり戻ったりを繰り返すだろう。
 そうしながら少しずつ前に進んでいくのだ。時代と共に。