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PLUTONA (IMAGE) (2016)

 コミックならではの演出を施した意欲作。


Plutona

 スーパーヒーローが出現しはじめてはや十数年。
 ある日、郊外の町に住む5人の少年少女 - 友人同士のミエダイアン、ミエの同級生でスーパーヒーローファンのテディ、同学年の不良レイ、そしてミエの弟マイク - らは林の中で世界最大のヒーロー、プルトナの遺体を発見する。互いにこのことを口外しないことを約束した彼らだったが、それを機にそれぞれの関係は大きく変わり始める…。


Plutona #1


 ジェフ・レミーアが公私共に親しくしているエミ・レノックスらと共に2015年から16年にかけて手がけたオリジナル作品。リーフでの刊行当時、経済事情などの理由で泣く泣く見過ごした作品を合本で入手。


 エミ・レノックスについては結構好きな絵柄でウェブコミックの『 EmiTown 』なども読んでいたのだけれど、実際に紙の本で目にするのは恥ずかしながら初めて。

 持ち味である太めのスラッとした筆使いはそのままに、ウェブよりいくらかデフォルメを抑え気味にしている。元々フラットな印象の絵柄はインテリアのカラーを担当したジョーディ・ベレーアの仕事もあり、輪をかけて平面的になっている(カバーの絵と見比べてみるとわかりやすいかも)。
 平面的な絵を用いた作品はここ最近非スーパーヒーロー系作品で増えつつある。登場人物の心情変化を引き立てる効果もあるようで本作でも中々効果的に働いている模様。


Plutona #2


 さて、改めて考えてみるとこの作品はレミーアの手がけた作品の中でも結構異色な作品かもしれない。

 5人の少年少女が偶然にも林の中でスーパーヒーローの遺体を発見したことに端を発し、秘密を共有することになった彼女らの顛末を描いた本作。
 正直、もやっとした感情の残る作品だ。

 レミーアの作品を読んだことがある人はわかると思うが、彼はキャラクターの情動を巧みに操って物語を転がすことに長けた人物で、特に何らかの”傷”を負った人物を描くのが得意だ。その手腕は本作でも存分に発揮されている。

 しかし本作が『 ESSEX COUNTY 』をはじめとした彼の作品と異なるのは、そういった”傷”に対する処方箋が全く示されない点。

 つまり、いつもの彼であれば何らかの救済をもたらしてハッピーエンドをもたらしそうなところを、本作では亀裂を広げるだけ広げた後、それを放置し敢えて尻切れトンボな終わり方で幕を閉じる(”敢えて”という言い方をしたのは、これがレミーアの意図したところであり、そのことは物語のエンディングに関わる”あるヒーロー”の投げやりとも思える態度にも現れているからだ)。


Plutona #3


 人によっては不満を覚えるかもしれないこの演出だが、実はコミックならではのとってもニクい手法とも言える。
 
 というのもこれ、満足度という点では賛否両論分かれるかもしれない一方、印象度という点では暴力的なくらい効果的だから。少なくとも下手にヒーローから説教食らって反省するような展開よりは全然強い。エンディングに翻弄されるあまり、その後のこととかあれこれ想像して反復再生している内、脳にインプリントされちゃうんですね。
 
 映像でこれをやると十中八九「逃げとしてのエンターテイメント」を求めるハッピージャンキーな視聴者から袋叩きに合うのでコスパが悪すぎて中々できない。ある意味、コミックという媒体だからこそやってのけてしまえるストーリーではある。

 レミーアは”コミック”という媒体の可能性を試行錯誤しているという旨をインタビューなどで言及しており、あるいは本作もそんな彼の試みの1つなのかもしれない。


 なお、レミーアとレノックスは現在ダークホースにて展開されているレミーアのオリジナルフランチャイズ『 BLACK HAMMER 』の新作で再タッグを組むことが最近発表されたので是非チェックしてみて頂きたい。


Plutona #4

 
 ……全然関係ないんだけど、この手の「少年少女がトラウマ的イベントを通して成長する」系作品のレビューを読むと高確率で『グーニーズ』(明るめな話の場合)か『スタンド・バイ・ミー』(暗めな要素を含む話の場合)を引き合いに出してくるものを見かけます。
 どちらも有名な作品だし、大概の人が知っているというのもわかるんだけれど紋切り型の文句みたいに出してくるのはどうかと思わんでもない。



Plutona #5