VISUAL BULLETS ー今日もアメコミ三昧ー

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マーベル『フレッシュ・スタート』新作#1だけレビュー (2/3)

 前回に引き続きマーベルの新ラインナップ『フレッシュ・スタート』の各作品を#1だけレビュー。

 今回取り上げるのは以下の5作品。


 刊行前にこれらを紹介した記事はこちら。
www.visbul.com

6.SENTRY

WRITTEN BY JEFF LEMIRE
ART BY KIM JACINTO


Sentry (2018-) #1

 今回のラインナップで一番の博打かとも思われていたタイトル。蓋を開けてみれば意外にも良い手応え。流石ジェフ・レミーアは裏切らない。

 当初、今回のシリーズではセントリーの復活劇が描かれるものかと思っていたが、カムバック自体はどうやら『 DOCTOR STRANGE #382 』で既に済んでいたようで。
 ただしその辺はさくっと、でもしっかり作中でフォローがあったので本作から読み始めても特に問題なし。

 面白かったのはキム・ジャシントの絵が作風はかなり異なるのに驚くほどレミーアのライティングと親和性が高いこと。ドラマパートなんかは読みながら脳裏でレミーア自身の絵柄とダブって再生されていた。

 #1自体は結構オーソドックスな展開で物語の運びという点では特に驚きはないものの、#2へ向けて十分期待のできる内容だったと思う。

7.DEADPOOL

WRITTEN BY SKOTTIE YOUNG
ART BY NIC KLEIN


Deadpool (2018-) #1

 個人的には今回のラインナップで一番期待していたタイトル。

 映画版そのもののネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッドとか(改変自体はだいぶ前から行われていたものの)、『 AVENGERS #1 』同様こっちもセレスシャルズネタだとか、違和感が全くなかったと言えば嘘になるものの、流石スコッティ・ヤングといおうか。次から次へと繰り出されるギャグでその辺結構どうでも良くなる。

 ネットの掲示板なんかを覗くと中にはこれを過剰と感じる人もいるようだけれど、数の割に大筋から逸れすぎないし、個人的にはデッドプールはこれ位がちょうど良いと思う。それこそ映画版のテンポを楽しめる人ならこれもイケるんじゃないか。

 ヤング自身よりだいぶメインストリーム寄りなニック・クラインらのアートも存外ライティングと相性が良く、派手ながらドギツくない丁度良い具合のバイオレンスコメディに。適度に渋みのあるアートによってハイテンションコメディが引き立ち、何ていうかスイカに塩を降ったら甘みが引き立つみたいな化学反応を生んでいる。

 ヤングのあとがきによると今後シリーズは1冊か2冊という通常より短いスパンの話を積み重ねていくようなので、興味を持った方は#2から読み始めるのもありかも知れない。

8.THOR

WRITTEN BY JASON AARON
ART BY MIKE DEL MUNDO


Thor (2018-) #1

 正直私はまだジェイソン・アーロンによるこれまでの連載をカバーしてなかったのでここから参加して大丈夫かやや不安だったものの、いざ読んでみるとそれほどとっつきにくくはなかった。

 先に残念に感じたことを挙げると『 AVENGERS #1 』でもブイブイいわせているロキがここでも登場していたこと。
 時系列がずれているとか色々言い訳はできると思うものの、同一のライターが担当しているにも関わらず同じキャラを別々の作品に登場させ、しかも片やヴィラン片やアンチヒーローとだいぶ差のあるキャラ描写をするのって禁じ手とまでは言わないものの、かなりの悪手じゃなかろうか(先日読んだ『 MARVEL COMICS : THE UNTOLD STORY 』でスタン・リーやロイ・トーマスの時代はその微調整に苦労していたという話を聞いていたから尚更かも知れないが)。

 尤もその他の中身については対ジャガーノート戦も楽しく派手な戦闘でオープニングにはぴったりだったし、ドラマパートも新たな幕開けを予感させつつしっかり話を転がしており、総じて良い感じ。

 マイク・デル・ムンドの絵柄はファンタジー感もありつつ適度にポップ。癖のある画風は初見なら評価が分かれるかもだけれど、慣れれば普通に読める。ただ現在のラフネックな雰囲気のソーとは微妙にミスマッチかもと思わんでもない。

 また、併録されていた遥か未来のソーを描く「オールド・キング・ソー」サーガは完全な続き物の途中だったのでフレッシュ・スタートもヘチマもなかったが、最初のあらすじを読んでおけばちんぷんかんぷんというほどではなかった。
 何と言ってもクリスチャン・ウォードの絵が魅力的。色遣いもさることながら、微妙な歪みを含んだ曲線に味がある。
 私的にはメインストーリーよりこっちの方が好みかも。

9.ANT-MAN AND THE WASP

WRITTEN BY MARK WAID
ART BY JAVIER GARRON (INTERIOR) & DAVID NAKAYAMA (COVER)


Ant-Man & The Wasp (2018) #1 (of 5)

 タイミング、中身などを鑑みても今度の映画をかなり意識していると思しきタイトル。
 別にそれ自体は悪いことじゃないけれど、スコットがだいぶちゃらんぽらんになっていたり、ナディアがかなりの姉御肌になっていたりと、過去の作品とキャラクターの人格に差があるのはちょっと違和感。同姓同名の別キャラと言われても特に驚かん。

 ストーリー全体は現状、可もなく不可もなくといったところ。ある意味マーク・ウェイドらしいライティングといおいうか。
 アート含めて全体的に無難とな作風。贅沢を言えばもう少し冒険しても良かったんじゃないかと思わんでもない。

 それと中身とは関係ないところで残念だったのは編集後記。アントマン&ワスプということでちょっとした”遊び”を試みて文字をミニサイズにしているのだけれど、私のiPadでは拡大したら文字が潰れてしまい読みづらかった。
 ”遊び”をやるのは大いに結構だが、こういうところで丁寧さを欠くと勿体無いことになるんじゃないか。

10.TONY STARK: IRON MAN #1

WRITTEN BY DAN SLOTT
ART BY VALERIO SCHITI (INTERIOR) & ALEXANDER LOZANO (COVER)


Tony Stark: Iron Man (2018-) #1

 色んなところで結構高い評価受けてるけれど、ごめん。これ私にはちょっと子供向け過ぎた。

 あちこちでトニー・スタークがすっかりMCUのロバート・ダウニーJrになってしまったと言われているけれど、映画の方でさえある程度カリスマ性があったのに対し、今回のコミックにおけるトニーからはそういうのがすっかり脱け落ちており、幼稚というか生意気なキャラクターが鼻につく。カバーと中身が全くの別人、スティーブ・ジョブスに会いに来たらジョン・ラセターが出てきちゃったとでも言えば分かる人はいるだろうか。

 あと、フィン・ファン・フームとの戦闘で次から次へ発明品が出てくるアクションシーンにしろ「みんながアイアンマンだ」というストーリー展開にしろ、どれも既にスパイダーマンで似たようなことをやってしまっているため目新しさがない。

 正直、全年齢向けアニメを見ているようで、そういうのに馴染みが薄い私はこのノリについていけなかった。が、逆を返せばそういうのも楽しめる大多数の人は本作も大いにエンジョイできるのかも。


 
 以上、今週の5作品でした。
 なお、上で述べたのは全て私個人の感想で、ぶっちゃけ結構偏ってるので気になる作品がある方は実際に作品を手にとって自ら読んで評価してい頂ければ幸いです。
 
 それではまた「フレッシュスタート」#1だけレビュー第3弾にて。