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DAWN OF X がフルスロットル! X−MEN の今


House of X/Powers of X

 かつてはマーベルを牽引するほどの一大勢力であったにも関わらず、近年は大人の事情で不遇の扱いを受けていた X-MEN
 ネズミがキツネを食べたことでようやく映像化権のいざこざにケリがつき、昨年からようやくまともな扱い受けられるようになりました。

 ただ長らく冷遇されていたが故にすっかり読者が離れてしまっていたので、生半可なテコ入れではかつての栄光を取り戻すことは難しい。

 そこで招かれたのがジョナサン・ヒックマン
 かつてマーベルで FANTASTIC FOUR AVENGERS 、メガクロスオーバー SECRET WARS のライターとして高い評価を受けた方です。ここ数年はマーベルを離れ、イメージでSFを中心にいくつかのオリジナル物を手がけていた彼ですが、 X-MEN を再びマーベル随一のタイトルに押し上げるべく凱旋。

  X タイトルは彼の監修下に置かれ、 DAWN OF X (俗に”ヒックバース”とも)呼ばれる時代が始まりました。



 鳴り物入りで始まった DoX 。
 ただヒックマンは世界観にこだわった複雑な物語を好む傾向があるライターであることに加え、現在の X 系タイトルは互いに連動したシリーズ数作品がそれぞれ月2程度のペースで刊行されていることもあり、混乱して脱落してしまう読者も相当数いる模様。

 幸か不幸かこんなご時世。新刊が滞っている今、バックナンバーを自宅で読みふけって追いつくには絶好のチャンスと思われます。

 
 今回の記事ではその手助けをすべく、プロローグである HOUSE OF X & POWERS OF X (注:後者の"X"はアルファベットの”エックス”ではなくギリシア数字の”10”です)の解説に加え、続いて刊行された各タイトルのサクッとした紹介をしてみようかと。

 
 私自身、全てのタイトルを追っかけているわけではないのでネットで収集した情報もあって間違いあるかもです。あしからず。
 あ、それと当たり前っちゃあ当たり前なんですが、HoXPoXのネタバレ全開ですのでこれまたあしからず。


HOUSE OF X & POWERS OF X
 
 HOUSE of XPOWERS OF X (以下略して HoXPoX )については、過去、現在、未来のみならず時間軸までもが入り組んだ非常に悩ましい物語構成になっています。
 
 
 その原因はモイラ・マクタガート
 プロフェッサーXの友人にして、 X-MEN の協力者である彼女はこれまで非ミュータント、つまりホモ・サピエンスだと思われてきましたが、本作によって実はミュータント、ホモ・スペリオールであることが明かされます。

 彼女の能力は転生。死を経験する度誕生した日に時間を遡り、新たな人生を歩むことができるというものでした。


  HoXPoX を読んでいて混乱するのは過去、現在、未来、遠い未来という4つの時間軸が重層的に展開される上に、それぞれが必ずしも同じ時間軸に乗っていないことが少しずつ明らかになっていくためだと考えられます。

 エヴァンゲリオンとか好きな方であれば(最終章延期になりましたね・・・)ネットで「Qは序破とは異なる世界線で実は旧劇の・・・」みたいな考察を見たことがあるのではないでしょうか。
 あんな感じかと。

 
 そんなわけで HoXPoX はモイラの転生を軸に物語を俯瞰すると多少わかりやすくなります。

 以下、 彼女の転生記録。


House Of X (2019) #2 (of 6) (English Edition)

 1回目の転生

 チャールズはじめ X-MEN の関係者とほとんど交流がないまま寿命を迎える。

 2回目の転生

 胎児の頃から1回目の記憶を保持したままであることに気づく(以降の転生でもそれまでの人生は基本全て記憶している)。
 大学でチャールズと同じ学校に通うものの、ほぼ交流なし。
 後にチャールズが自身がミュータントであることを明かした際、自身もそうであることに初めて気づき、彼と接触を図ろうとするものの、その道中の航空機が墜落して死亡(この時点で何か陰謀くせえな・・・と読んでいる時思いました)。

 3回目の転生

 学校でチャールズと接触を図るものの、ミューテーションが病だと信じている彼女は彼に幻滅。袂を分かち、研究者としてミューテーションを無効化する治療法を開発。
 ところがそれが仇となってミスティークらからの襲撃を受ける。襲撃者の1人で未来を見通す力を有するデスティニーはモイラの転生能力を看破。更にその回数は10ないし11までであると告げる。
 デスティニーの(脅迫じみた)説得によって方針転換を迫られた後、モイラは殺害される。

 4回目の転生

 考え方を改めたモイラはチャールズと再び接触、彼の語る夢が単なる誇大妄想ではないと理解し、それがきっかけで恋仲になり結婚。2人でエグゼビア学園を設立するも、後にセンチネルの襲撃に遭い死亡。

 5回目の転生

 それまでの転生経験における人間からの弾圧を憎み、強硬姿勢を取る必要があると判断したモイラ。13歳で家出し、まだ少年のエグゼビアと接触。自身に感化された彼と共に学園ではなく国家を作り上げるものの、これまたセンチネルの襲撃に遭い死亡。

 6回目の転生

 ちょっと特殊なので後述。

 7回目の転生

 ミュータントの未来にとって最大の脅威となるセンチネル。その開発者であるボリヴァー・トラスク及びその一族を根絶やしにするべく活動。ところが結局の所、喩えセンチネルが作られなくとも何らかの形で「ミュータントの驚異としての人工知能」という存在は生まれてしまうことを思い知らされた後、戦死。

 8回目の転生
 プロフェッサーXではなくマグニートーの協力を仰ぎ、人類との戦争を起こすものの、 X-MEN やアベンジャーズなど地球のヒーローからの反撃に遭い敗北。収監された後、脱走に失敗し死亡。

 9回目の転生
 今度もエグゼビアではなくアポカリプスと接触。エグゼビアとマグニートーを殺害し、自分達の X-MEN を立ち上げる。
 後に再び人類に戦争を仕掛け、「ミュータント VS 人類+機械」の膠着状態に。モイラも負傷、長い眠りに着く。
 最終的にアポカリプス率いる10人のミュータント部隊( POWERS OF X の10という数字はここから来ている模様)が、センチネルの進化系ニムロッドに関する情報を入手。次の転生で活かせられるよう目覚めたモイラにそれを託し、ウルヴァリンが彼女を殺害。


House Of X (2019) #5 (of 6) (English Edition)

 
 ・・・もうこの時点で頭がパンクしかけている方が多いのではないでしょうか。
 

 繰り返す転生の中で特に重要な情報を含むのが3回目(モイラが自分の転生が10回か11回までと知る)、6回目、9回目(ニムロッドに関する情報を入手)の転生だと思われます。

 中でも最も重要なのが以下に示す6回目の転生です。

 6回目の転生
 ミュータントと人間ー機械連合との戦争もとうに終わった1000年後の未来。
 地球は進化の最終形態である半人半機ホモ・ノヴィシマが統べており、来るべき銀河における知的生命体としての最高位であるファランクスに迎え入れられる日を待ち望んでいた。

 そんな中、”司書(ライブラリアン)”と呼ばれるノヴィシマが「神の一部になる代償として自身が消失する」という事実に気づく。
 迷いが生じた(?ここ曖昧)”司書”は保護施設の中に僅か残されたミュータントと共に生き永らえていたモイラに接触。これまで繰り広げられてきた闘争が「自然進化したホモ・スペリオールと、ホモ・サピエンスと機械が融合する形で人工進化を遂げたホモ・ノヴィシマとの競争」であったこと、そしてセンチネルやニムロッドといった機械はホモ・ノヴィシマが登場するまで時間を稼ぐ前座に過ぎなかったことを告げる。

 ミュータントの本当の敵が人類でも機械ではなく、ホモ・ノヴィシマであることを知ったモイラは次の転生に活かすべく同じく生き永らえていたウルヴァリンに頼み、彼に殺害してもらう。


 はい、6回目の転生ぶっとんでますねー。他8回の転生が霞んで見える煩雑さ。


 整理してみると・・・

 1−5回目までの転生でミュータントの脅威がセンチネルやニムロッドであると悟ったモイラ。
 6回目の転生でその理由を知るため遥か未来まで生存。ところが真の敵はホモ・ノヴィシマであることを知る。
 ただミュータントの前に機械が立ちはだかる事実は変わらないのでそれをどうにかしようとしたのが7−9回目の転生。
 9回目の転生でようやくニムロッドを打倒するための知識を得、機械の脅威を排除する準備が整う。

 という感じです。
 これを踏まえていよいよ10回目の転生、つまり現世となります。


Powers Of X (2019) #6 (of 6) (English Edition)

 
 10回目の転生でいよいよミュータントの未来をこじ開ける準備が整ったモイラ。

 彼女はまずチャールズと共にマグニートーエマ・フロスト、果てはミスター・シニスターアポカリプスとまで接触し、ミュータントの未来のため協力し合うことを呼びかけます。
 敵同士とはいえ、元々こうした者達は「ミュータントが生き残るにはどうすれば良いか」という点で意見が対立していただけであり、「ミュータントが生き残る」という前提条件については意見が一致しています。
 皆、最終的には(一部は条件付きで)協力することに同意しました。
 
 さらにチャールズは知能を持つ島クラコア(かつて GIANT-SIZED X-MEN #1 で登場した怪物島)に多言語能力を有するサイファーことダグ・ラムジーを通訳として派遣し、こちらに対しても交渉を重ねます。

 そして遂にチャールズは全てのミュータントをクラコアに迎え入れて新国家、通称 HOUSE OF X を樹立するに至ります(ただもっぱら HoX という呼び方はあまりせず”クラコア”で済ませてるみたいので本記事でも以下そのように扱います)。


Powers Of X (2019) #4 (of 6) (English Edition)

 ただ当然のことながら既存の世界各国は少なからずこれに警戒感を示します。


 そんな人類の反応を見越したチャールズ。巧みにアメとムチを使い分けます。

 まずアメ。
 クラコアは一口に”知恵を有する島”と言っても、話はそう簡単ではありません。我々が一般にそう呼んでいる”島”という存在としては遥かに進化しており、ホモ・サピエンスにとってのホモ・スペリオールに近い、これも一種のミュータントです。
 それ故、クラコアは通常の自然体系ではあり得ない数多くの能力を有しており、その最たるものが島に原生する”クラコアの華( FLOWERS OF KRAKOA )”という植物です。

 この華からは寿命の延長や超強力な抗生物質など人類にとって夢のような医薬品を生成することができます。
 エグゼビアは各国に対し、自分達の国家を認め、攻撃しないことを約束させる代わりにこの医薬品を譲渡することを提案します。

 ちなみに”クラコアの華”にはミュータントが移住できる土地を生み出したり、そこへの転移通路を生み出すものも存在します。
 (それと1種類だけ悪い意味でヤバイのがあるそうで、それは今後面倒を起こしそう・・・。)


 話を戻し、続いてムチ。
 人間の中には「薬とか知ったこっちゃねえ、人類存亡の危機だ!ミュータントは根絶やしにしろ!」という過激派もいます。
  A.I.M. S.H.I.E.L.D. 内から寄り集まったそんな連中はオーキス( ORCHIS )計画というものを発動させ、強力なセンチネルの開発に着手します。

 しかし、実はこれこそモイラが9回目の転生で得た情報。オーキス・プロトコルによって生み出されたセンチネルが、やがて進化してニムロッドになりミュータントを駆逐し始めると知っている彼女とエグゼビアはこれに対し、 X-MEN を派遣。
 結果、 X-MEN は全滅するものの、ニムロッドの開発は阻止され、遂にミュータントは機械の脅威から解放されます。


House Of X (2019) #4 (of 6) (English Edition)


 めでたしめでたし・・・。

 え、ふざけんな? X-MEN が全滅しちゃ X-MEN にならない?


 心配は御無用。

 クラコアではどんなミュータントにも基本的に死が存在しません。

 クラコアでは、ミスター・シニスターの遺伝子技術やエグゼビアのテレパシー、そしてホープ・サマーズをはじめとした5人のミュータントの能力によって死者はいつでも最新の記憶と最新の肉体を得た状態で再生することができるのです(もちろん、この機能の鍵となる者達のバックアップも予め用意されている)。


 こうして遂に未来への展望が開けたミュータント達。

 自分の存在と転生の情報が広まるとこれまでの計画が瓦解すると考えたモイラは自ら死を偽装し、政治をエグゼビアをはじめとした14人のミュータントで構成される”クラコアの静かな評議会”に任せることに。

 かくしてホモ・スペリオールの新時代 DAWN OF X が幕を開けます。


 初見殺しとはこのことですね、はい。
 私自身、これまで X-MEN の現状はふわふわした認識でしたわ・・・。

 まあ、あれです。
 最小限の知識としては

 1.モイラは転生能力を有するミュータントだったよー
 2.その知識でエグゼビアとミュータントの独立国家を作ったよー
 3.今までの敵味方関係なくミュータントは皆仲間だよー
 4.ミュータントは死んでも復活するよー
 5.最終的な敵は(現状では)ホモ・ノヴィシマっていう神っぽい種族だよー

 
 あたりですかね。


DAWN OF X

 HoXPoX を経て迎えた新時代 DAWN OF X と呼ばれるラインナップではまず昨秋に以下の6タイトルが刊行されました。

X-MEN


X-Men (2019-) #1 (English Edition)

 
 一目瞭然のフラグシップタイトル。主にサマーズ一家+ウルヴァリンが活躍し、まだ新国家としてよちよち歩きな状態のクラコア国家が晒される様々な脅威に立ち向かいます。

MARAUDERS


Marauders (2019-) #1 (English Edition)

 クラコアに行きたくても今住んでいる国が移住を許してくれないなど諸事情でそうできない者も。キティ・プライド率いるチームが世界中に散らばっているミュータントをクラコアへ導くべく活動します。

EXCALIBUR


Excalibur (2019-) #1 (English Edition)

 マーベル・ユニバースにはミュータントもいりゃ魔法も存在するわけで。そういったアブラカダブラに対応するチームも必要になってきます。魔女モーガン・ル・フェイの手中に落ちた兄を救うべく、キャプテン・ブリテンの称号を継いだベッツィー・ブラドック(元サイロック)がチームを結成します。

X-FORCE


X-Force (2019-) #1 (English Edition)

 
 いくら復活が簡単とは謂え、生きとし生けるものは大切にしなければなりません。クラコアでも基本的に殺生は禁止、破れば重い罰が待ち受けています。でも時には対外的な荒療治も必要。プロフェッサーXビーストによる指揮のもと、クラコアで唯一殺人を許されたチームの活躍を描きます。

NEW MUTANTS


New Mutants (2019-) #1 (English Edition)

 未来を語る上で忘れてはならないのならない次世代を担う者達。宇宙海賊スター・ジャマーズと共に宇宙へ旅立つことになった元祖ニュー・ミュータンツの他、アーマーなど若きミュータント達の活躍を描きます。

FALLEN ANGELS


Fallen Angels (2019-) #1 (English Edition)

 やや変化球。上記の通りキャプテン・ブリテンの名を受け継いだベッツィー・ブラドック。その彼女からサイロックの名を受け継いだカノンを中心にミスター・シニスターらが絡むサスペンス活劇ですが、あまり他のシリーズとは関わってきません。元々ミニシリーズの予定だったのか、はたまた人気が伸び悩んだのか#6をもって終了しています。


これに続いて今春から刊行予定だったのが以下の6シリーズ。

WOLVERINE


Wolverine (2020-) #1 (English Edition)

 
 タイトル通りウルヴァリンが活躍。’NUFF SAID。

CABLE


Cable (2020-) #1 (English Edition)

 タイトル通りケーブルが主役。ただしケーブルはヒックブート以前にオッサンバージョンが死亡しているので、若き新生ケーブルになります。

HELLIONS


Hellions (2020-) #1 (English Edition)

 ミスター・シニスターによって招集されたワイルドチャイルドら変化球やならず者達が危険な任務に赴く。先に終了した FALLEN ANGELS とも少し繋がってる?

CHILDREN OF THE ATOM


Children Of The Atom (2020-) #1 (English Edition)

 サイクロップスをはじめとした X-MEN のメンバーと何らかの関係を有する謎の若きミュータント達の活躍を描く作品。X−MEN版のティーン・タイタンズとでもいったサイドキック物になるとか。

X-FACTOR


X-Factor (2020-) #1 (English Edition)

 ノーススターの指揮下に置かれたチームが復活を前に死亡したミュータントの死因を調査します。・・・ジェイミー・マドロックスは登場しないのでせうか(泣)。

X-CORP

 まだ詳細が発表されていない謎の作品。


 ただ2020年4月現在、 WOLVERINE CABLE を除いた4シリーズは今回のコロナ・ショックの影響で刊行が延期となっています。

 
 以上が DAWN OF X に関する現状の解説でした。


 ジョナサン・ヒックマン主導による X-MEN は今再び大きな盛り上がりを見せつつあります。これまで X-MEN を敬遠してきた人も、 ここまでちょっとつまずいて話についていけなくなってしまった人も。
 
 追いつくなら今がチャンスです。


 自宅待機が続いて鬱屈な気分になりがちな毎日ですが、そんな時こそコミックを読み漁って嫌な気持ちを吹き飛ばしましょう!

 本記事が僅かでもそのための手助けになれたなら幸いです。

 ではまた!