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コミックエッセイ: アメコミ映画のファンにおすすめするコミックの選び方(後編)

昨日の続き。



前編はこちらから。

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 …と、まあ。最初は初めて読むアメコミの選び方というテーマで描き始めたものの、なんとなく映画ファン向けに原案となったコミックの探し方みたいな内容になってしまい、むしろマニアックになったかもという気がしないでもない。


 ただ実際、映画なりドラマのファンがコミックの方になかなか流れてきてくれない現状は結構問題視されてるようで。
 最近もディズニーがマーベルの出版部門を考えているなんてデマがまことしやかに囁かれネットを賑わせた。

 MCUやDCEUのアメコミ実写版の大きな特徴の1つが、通常の小説や漫画の実写版みたくこれといった”原作”をもたないということだ。良くて”原案”といったところだろう。
 ”シビル・ウォー”なんかも映画を観た後にコミックを読んだら結構内容が違ってて驚いたという人もいるんじゃないだろうか。

 このことは一方で公開まで本編の内容がわからないという点じゃ実写版に有利だが、他方それを楽しんだ観客が次の拠り所を見失ってしまうという点でコミックには不利だ。

 DCやマーベルもそれなりに公開前後にベスト選みたいな合本出すこともあるが、正直物足りない感は否めない。


 折角MCUが世界的センセーションを巻き起こし、DCEUも息を吹き返し始めているというのに、これらのファンをコミックに取り込めないというのは出版社にとっても非常にもったいないし、読者側にとっても残念だ。


 そんなわけで紹介しようと思ったのが上のエンドクレジットに流れるスペシャルサンクス( SPECIAL THANKS )から原案となったコミックの連載を割り出す方法だ。ST方式とでも呼ぶとしよう。

 
 具体的な例を使ってみよう。例えば2014年に公開された『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』のエンドクレジットで最後の方に流れる”Special Thanks”にクレジットされているのは

Brian Michael Bendis
Ed Brubaker
Gene Colan
Gabriele Dell'Otto
Marko Djurdjevic
Kieron Dwyer
Steve Epting
Mark Gruenwald
Bob Harras
Don Heck
Frank G. Jackson
Jane Lang
Stan Lee
Paul Neary
Don Rico
Ivan E. Schwarz
Paul Sprenge

となっている(imdb.comから引用)


このうちアメコミのライターは

Brian Michael Bendis
Ed Brubaker
Mark Gruenwald
Bob Harras
Stan Lee
Don Rico

の6人。


スタン・リーとブライアン・マイケル・ベンディスについてはマーベル全体に影響を及ぼしており、大半のMCU作品でクレジットされてるいわば常連なので一旦横に置いておこう。

ドン・リコもおそらくはブラック・ウィドーの生みの親としてクレジットされているのでストーリー的なインスピレーションとしては薄いと思われる。


すると今回の映画にストーリー的な影響を及ぼしたのは

Ed Brubaker
Mark Gruenwald
Bob Harras

の3人ということになる。
言ってみれば彼らは『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』というジュースを作るために使われた果実、その生産者というわけだ。


なのでこの映画が気に入った人は

エド・ブルベイカーによる CAPTAIN AMERICA VOL.5 #1からの連載


Captain America: Winter Soldier Vol. 1 (English Edition)

マーク・グルンワルドによる CAPTAIN AMERICA #307からの連載


Captain America (1968-1996) #307 (English Edition)

をまずは読むと良い。


コミックに関する知識があまりない人でもそれなりの英語力があればウィキなどを使ってここまでは(やっぱり手間はかかるけれど)なんとか辿り着けるだろう。


さらにそこそこアメコミを読みこなしている読者ならもう一歩突っ込むことができる。


もう1人、元マーベルのEiCを務め、ライターとしての連載経験も持つボブ・ハラスだが、ぱっと見彼はライターとしてキャプテン・アメリカの連載をした形跡がない。
 
しかし彼の代表作にはこんな作品がある。


S.H.I.E.L.D.: Nick Fury Vs. S.H.I.E.L.D. (Nick Fury vs. S.H.I.E.L.D. (1988)) (English Edition)

実はこの NICK FURY V.S. S.H.I.E.L.D. という作品こそ、あまり世に知られていない映画の隠れた原案となっているのだ。

なるほど読んでみると、S.H.I.E.L.D.という組織が潜入した敵の工作員によって内側から壊されていくコミックの内容は映画にも共通している。



こんな風にST方式を使えばちょっとぐぐるだけじゃ見つからないような原案を探し当てることが可能となる。


正直自分でもどんくさい方法のように思えるし、書いているうちに新規読者向けじゃないよなと思ってこなくもない。


ただ慣れると結構使えるし、漫画の方でも述べた通りこれなら映画の興奮を読書体験にも引き継ぎやすいので私自身は重宝してる。

アメコミ読者が読んだことない人に「おすすめ紹介して」などと訊かれた時には使い道があるんじゃないだろうか。


困った時は是非一度お試しあれ。


注:
今回紹介したこのST方式は万能というわけではなく、例えばDCEUだとジェフ・ジョーンズはプロデューサーとしてクレジットされているためスペシャル・サンクスには表示されないなど問題もある。あしからず。


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