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レビュー: 実写版 『HAPPY!』(NETFLIX)


Happy! Deluxe Edition(原作コミック)

  NETFLIX で配信されている HAPPY! 全8話を観終えたのでその感想をば。

 原作は IMAGE から刊行されている同名コミックで、大まかなあらすじはそちらと変わらないので以下のレビューを参照。

www.visbul.com

 結論から言えばそれなりに楽しめましたです、はい。気分としては季節外れのクリスマスコメディを観た感じ(いや、実際そうなんだけど)。
 衝撃的作品というほどではないにせよ、一気観できるくらいの吸引力はある。

 『ホーム・アローン』の主人公を中年に、あのピタゴラスイッチ的な撃退術を全て拳と鉛にしたものをイメージすればそう遠くないかと。あの手のノリが好きなまま20代30代を迎えた人なら十分オススメ。

 原作の方が100ページに満たない長さなので45×8=360分にするなら当然独自要素を入れざるを得なくなり、そこが間延びした感じにならないかと観る前は若干不安だったものの、蓋を開けてみればそんなこともなく。むしろスピーディな展開だったのでサクサク話数を重ねられた。
 
 原作を手がけたライター Grant Morrison がどちらかというとアイデアで勝負してキャラクターの厚みは二の次三の次って人だから、実写では原作には登場しないオリジナルのキャラクターや設定を加えやすかったのかも。追加要素はどれも違和感なく掘り下げられており、ストーリーに厚みを与えている。

 また本作がバイオレンスコメディをウリにしていることに関して、原作のアートを手がけた Robertson の暴力描写はコマ(とコマの間)の存在を利用した良さがあるのであれをそのまま映像化することは不可能だとは思っていたが、実際ドラマではショッキングながらもテンポの良さを強調した映像ならではのものになっていた。
 とはいうものの、受け手に与える印象はだいぶ近いことを考えると成功していると言えるんじゃなかろうか。
 決して派手ではないものの、細かい部分を丁寧に作っていると見て取れる作品だった。

 原作要素はこのシーズンでほぼ使い切ったので既に製作が決定している第2シーズンは完全なオリジナルとなるが Morrison が関わっているというので大きく脱線することもないだろう。今回と同じくらいの丁寧さなら十分観たいと思える。
  
 主だったイースター・エッグはぱっと思いつく限りだと、スケッチ・アーティストの作品に原作ライターである Grant Morrison のものがあったことくらいか。はっきりしなかったがその斜め上にあったのはアーティスト Darick Robertson かも。
 あとサンタのイマジナリー・フレンドも読み返してみたら原作にも終盤の一斉攻撃シーンで隅の方にちらっと登場していた。

 実写オリジナル要素ではあったものの、あの手のコスプレパーティは Morrison が『 INVISIBLES 』や『 FILTH 』といった別の作品でやたら登場するものなのでそこからインスパイアされたものかと。