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異能者達が奇怪な事件に立ち向かう『ドゥーム・パトロール』


The Doom Patrol Omnibus

 ここ最近は次から次へと新たなコミックの実写化作品が発表されている。昨日も既にオンライン配信が決定している『 TEEN TITANS 』からのスピンオフとして、新たに『 DOOM PATROL 』の製作が発表された。

 原作である DC コミックスの同名コミックは奇抜なアイデアで度々読者を驚かせたカルト的人気を誇るチームなだけに実写化に対するファンの期待は既に高まっている。

 今回の記事はそんな異色のスーパーヒーローチーム”ドゥーム・パトロール”について紹介しよう。

初登場 — MY GREATEST ADVENTURE#80


Doom Patrol: The Silver Age Vol. 1

 
 ドゥームパトロールは冒険物アンソロジー作品『 MY GREATEST ADVENTURE 』#80 にて初登場した。原作者はライターの Arnold Drake と同僚の Bob Harney 、そしてアーティストの Bruno Premiani など。 Drake はマーベルで30世紀を舞台に活躍するオリジナルのガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシーの生みの親でもある。
 
 ドゥーム・パトロールは既存のヒーロー物とは一風異なるキャラやストーリー、それにチームが頻繁に口論したり悩みを吐露したりというようなメロドラマ展開が好評を博し、瞬く間に読者の心を勝ち取る。打ち切りが予定されていた『 MY GREATEST ADVENTURE 』も刊行継続が決定、#86からは正式にタイトルが『DOOM PATROL』に改められた。
 
 なお、はぐれ者の集団であることや、チームを率いる人物が車椅子に乗っていることなどがマーベルの X-MEN と似ているとして一時ごたついたこともあったが、現在は偶然の一致としてお互い矛先を収めている。

 さて、5年近く奮闘したドゥーム・パトロールだが徐々に人気は低迷。オリジナル・シリーズは68年の #121 で終了することが決定した。
 その最終号では何とチームがほぼ全滅するという衝撃的な展開で幕を閉じ、読者に強烈なインパクトを残した。

VOL. 2 — GRANT MORRISON’S RUN


Doom Patrol Book One

 その後紆余曲折を経て復活したドゥーム・パトロールは DC でマイナーヒーローにスポットを当てる SHOWCASE 誌などに登場するが思ったほど人気は奮わず。1987年にようやく始まった第2シリーズもすぐさま人気が低迷した。

 そんな中、新たなライターとして白羽の矢が立てられたのが Grant Morrison 。当時『 ANIMAL MAN 』の連載が大詰めを迎えていた彼に対し、『 ARKHAM ASYLUM 』の脚本を読んだ DC の編集者が声をかけた。

  Morrison は本シリーズを手がけるにあたって、メンバーの多くが事故や怪我によるハンディキャップを抱えていることに注目し、心を病んだ存在としての彼らをクローズアップした。
 他方、当時業界で主流だった暗く重々しい作風を避けるべく、チェコの映像作家ヤン・シュヴァンクマイエルらをはじめとしたシュルレアリスム作家などから着想を得て、奇妙奇天烈の要素をふんだんに作品に盛り込んだ。
 やがて89年の#19から始まった Morrison の連載は瞬く間にヒットとなった。彼による#63までの連載は現在でも他に類を見ない異色作として歴史に名を刻んでいる。

VOL.6 — GERALD WAY & NICK DRAGOTTA


Doom Patrol Vol. 1: Brick by Brick (Young Animal)

  Morrison が離れて以降は再び人気が低迷してしまったドゥーム・パトロール。
 打ち切りと復活を繰り返しながらファンを一喜一憂させていたが、2016年の DC REBIRTH に合わせて、新たに立ち上げられた YOUNG ANIMAL というレーベルの中心タイトルとして新シリーズの刊行が決定する。

 ライターは元マイ・ケミカル・ロマンスのボーカルとしても知られる Gerard Way 。 DARK HORSE から刊行された『 UMBRELLA ACADEMY 』シリーズで既にその才覚を遺憾なく発揮していた彼は、 Grant Morrison 作品の大ファンでもあった。

 彼がアーティスト Nick Dragotta らと共に送り出した第6シリーズは Morrison 時代の奇抜さを受け継ぎつつも、近年のポップカルチャーから影響を受けた独特の明るさでファンを魅了。ドゥーム・パトロールは三度のヒットに輝いた。
 
 この現行シリーズは休載を挟みながら現在も DC の人気タイトルとして号数を重ねている。

CHARACTERS

 
 ドゥーム・パトロールはシリーズごとにメンバーのばらつきが大きいため、ここではオリジナル・メンバーの4人と、現在2019年の実写作品に登場することが発表されているクレイジー・ジェーン及びビースト・ボーイについてのみ紹介する。

 なお、ドゥーム・パトロールはリブートなどの影響で何度か歴史が書き換えられており、一部死亡した筈のメンバーが知らない間に復活しているなど説明されていない部分も少なくない。

ロボットマン

 
 本名クリフ・スティール
 元レース・ドライバーだったが事故で大怪我を負い、唯一無事だった脳をチーフの手で機械の体に移植される。
 
 オリジナル・シリーズでメンバー全員が死亡した際はこれまた脳が無事だったためウィル・マグナス(メタルメンの生みの親)に新たな体を作ってもらい、いち早く復活。
 以後、面子がころころ入れ替わるチームでただ1人の固定メンバーとして、これまで刊行された全てのシリーズで登場する。

 自らの身体にコンプレックスを抱えてうつ病を患っていたが、クレイジー・ジェーンとの出会いなどを通して徐々に克服し、今ではチームの文字通り縁の下の力持ちとして活躍している。

ネガティブマン

 本名ラリー・トレイナー
 航空機のテストパイロットをしていた際に偶然放射線を浴びてしまい、自らの肉体も放射能を帯びてしまうと同時に謎多きネガティブ・エネルギー体に自らを投影する能力を得る。

 ネガティブ・エネルギー体の時は飛行や透過といった能力を有するが、その間は元の肉体が無防備な状態になってしまう。放射能を帯びた肉体から周囲を守るため、チーフが開発した特殊な包帯を常に全身に巻きつけている。


 ネガティブ・エネルギーを含め謎が多い存在で奇行も多い。オリジナル・シリーズで全員が死んだ後もいつの間にか復活していた。

 Morrisonによる連載の際には新たにエレノア・プールという女性も取り込んで悟りを開いた結果、白ブリーフにブラジャーという出で立ちで最終決戦に臨むような奇人ぶりを発揮した。お察しください。

イラスティ・ガール

 本名リタ・ファー
 元オリンピック水泳の金メダリストで後に転身して女優となった。アフリカで撮影を行っていたところ奇妙な火山ガスを浴びて肉体が変化、体のサイズが変化するようになってしまう。
 当初はこの能力が制御できず、女優としてのキャリアが絶望的となっていたところをチーフに誘われてドゥーム・パトロールに参加する。

 遅れてチームに参加したESP能力の持ち主、メンターことスティーブ・デイトンと恋に落ち、結婚。やがて同じくチームメンバーのビースト・ボーイことガーフィルドを養子に迎える。

 オリジナル・チームが死亡した後、しばらくしてチーフの手で肉体を再生されるものの、しばらくは意識が混濁しており肉体も不安定だった。

 新シリーズには最近ようやく登場したばかりなのでこれらの設定をどれくらい受け継いでいるのかまだ不明。

 なお、日本語表記だと某ミスター・インクレディブルのお母さんと名前が完全に被っているが、こちらは”ELASTI”と”GIRL”の間にハイフンが入る(”ELASTI-GIRL”)。

チーフ

 本名ナイルス・コールダー
 とある実験中、事故に遭い半身不随となったことから人生観が変化。自分と同じように事故などで障害を負ったメンバーを集めてドゥーム・パトロールを結成する。
 天才的な頭脳を持つ科学者でクリフの機械ボディやラリーの包帯なども彼の発明品。また、ドゥーム・パトロールの活動資金も彼の特許収入などで賄われていた。

 初期はチームの指導者的立場だったが、後に冷酷で無慈悲なマッド・サイエンティストであることが判明。オリジナル・メンバーの事故も彼が裏で手引きしていた。

 その後色々あって改心したのか現在もドゥーム・パトロールとは付かず離れずの距離を保っており、時折チームの主導権を握ろうとしては痛い目を見ている。

クレイジー・ジェーン

 Morrison時代からチームに加わったメンバー。幼少時に父親から虐待を受けたことがきっかけで人格が64に分かれ、さらにDCのクロス・オーバーイベント『INVASION』時に異星人の兵器”ジーン・ボム”の影響でそれぞれの人格に固有の特殊能力が与えられた。
 戸籍上の名前はケイ・シャリーだが、他にもジェーン・モリス(これがデフォ)、ドライバー8などその時々によって呼び名が変わる。

 人格能力ともにかなり不安定だが、ウィル・マグナスによって引き合わされたクリフと交流することで徐々に改善する。

 実在の多重人格者 Truddi Chase にインスパイアされている。

ビースト・ボーイ

 本名ガーフィルド・ローガン
 幼い頃に難病を患い、遺伝学者だった両親から開発中の新薬を投与された結果、緑色の肌とどんな動物にも変身できる能力を手に入れた。
 両親を事故で失った後、遺産を巡るトラブルに巻き込まれていたところをドゥーム・パトロールに救出され、後にリタとスティーブの養子となると共にメンバー入りを果たす。

 オリジナル・メンバーが死亡した後はロビンやサイボーグら若きヒーロー達と共に新生ティーン・タイタンズを結成。チームのムードメーカーとして活躍する。


New Teen Titans Vol. 1 NEW TEEN TITANS VOL 1 [ Marv Wolfman ]

 今度の実写化でも『 TEEN TITANS 』と『 DOOM PATROL 』を繋げる橋渡しの役割を担うものかと。




 …以上がドゥーム・パトロールのざっとした紹介でした。ちょっと長くなってしまったのでブラザーフッド・オブ・イービルなどのヴィランはまた別の機会に。

 これから読みたい人は上に挙げたオリジナル・シリーズ、 Morrison 時代、それに現行シリーズのどれかを入り口にするのがおすすめ。他では味わえない仰天世界をお楽しみ下さい。

 ではひとまずこんなもんで。