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引き続きマーベル『フレッシュ・スタート』新ラインナップを徹底解説!(2/3)

 前回に引き続きマーベルの新ラインナップ『フレッシュ・スタート』の各作品をご紹介。

 今回は主に6月から刊行される5作品を取り上げよう。


marvel.com
カバー画像などは上記公式サイトからどうぞ

6.SENTRY

WRITTEN BY JEFF LEMIRE
ART BY KIM JACINTO

 主に2000年代に活躍したマーベル版スーパーマンともいうべきヒーロー、セントリーの新シリーズ。
 その複雑な設定と煮え切らないキャラが読者から受け入れられず2010年のミニシリーズ SIEGE で死亡してからほとんど誌面に登場することはなかったが、どういうわけかこの度復活。これまで他のタイトルで復活したあるいはする予定という話もきかないので、おそらくこのシリーズにて復活劇が描かれるものと思われる。

 大して人気がないにも関わらず今回復活したことに多くのファンが疑問を呈する一方、シリーズのメインライターを務めるのは情緒を重視した意外性のあるストーリーで人気のクリエイター Jeff Lemire 。実は Lemire もマーベルと一度喧嘩別れしており、本作が久々のマーベル復帰作となっている。 
 需要の少ないキャラのタイトルではあるが、打てば響くライターが就いただけに一読する価値はあるだろう。

 個人的には今回のラインナップ中、最も博打なタイトルではないかと。

7.DEADPOOL

WRITTEN BY SKOTTIE YOUNG
ART BY NIC KLEIN

 上が博打ならこっちは安心。

 バイオレンスコメディに定評がある Skottie Young はその作風からもわかる通りデッドプールの大ファン。過去にもデッドプールの担当を希望したことがあるものの、その時は既に他のクリエイターがタイトルを担当することが決定していたので泣く泣く諦めたことがある(この時は代わりに ROCKET RACCOOON を担当した)。

 その後、オズの世界にデッドプールをぶっこんだ I HATE FAIRYLAND(IMAGE) のヒットが評価されたのか、この度念願のライティングを担当することとなった。過去作を読めば彼がデッドプールにいかにうってつけかは十分わかるのでこれはマーベル、的確な采配といえる。

 作画はドイツ出身のアーティスト Nic Klein 。代表作は DRIFTER(IMAGE) だが、 DC やマーベルにもちょくちょくアートを提供している。 SNS からの発信も盛んに行っているのでどんな絵柄か気になる人はツイッターの @NicKlein からチェックしてみると良い。
 リアル過ぎずほどほどに線がラフなのは個人的に好みなので期待したい。

 そんな彼らが担当する新シリーズでは、 SECRET EMPIRE でヒドラ側についてしまい最近はその後始末に忙しかったデッドプールがようやくこの度傭兵稼業に復帰…しようとする中、突如宇宙からやって来る脅威に立ち向かうという。
 どんなハチャメチャぶりを見せてくれるのか期待が高まる。
 
 …というか何だか宇宙系多くないか?ヴェノムにブラックパンサーにドクター・ストレンジにデッドプールに尽く宇宙ネタ。そういやアベンジャーズもセレスシャルズだし。別に文句があるわけじゃないけど、何かの伏線かしらね。

8.THOR

WRITTEN BY JASON AARON
ART BY MIKE DEL MUNDO

 2012年からソーを手がけている Jason Aaron がライターとして続投。ただしここ数年は ORIGINAL SINS (訂正:正しくは”ORIGINAL SIN"でした。複数形は別物じゃい)以来ジェーン・フォスターの女性版ソーがメインだったのに対し、今度の新シリーズは再びオーディンソンがムジョルニア(?)を握る。
 ある程度まっさらな状態から始めるとは謳っているものの、これまでの内容を全部捨てるとも思えないので余裕がある人はこれまでのシリーズを復習しておくと良いかも。少なくとも未来のソーを描いたバックアップの外伝 KING THOR SAGA は前のシリーズから引き継いでいる模様。
 
 アーティストの Mike Del Mundo はこの何年かで急速に脚光を浴びるようになった新鋭。 Tom King との『ヴィジョン』シリーズにはじまり、アベンジャーズなんかを担当していた時期もあったが、そのやや浮世離れした画風はミスティカル系作品の方が合うんじゃねと以前から言われていた。今回その期待に応えるような形でソーを担当することになったのは素直に喜んで良いかと。
 
 上の方でムジョルニアに「(?)」とつけたが、実はムジョルニアは最近ぶっ壊れたばかり。
 新シリーズの開幕戦は対ジャガーノートになるようで、ソーはどうやら代わりとなるハンマーを無数に用意して対抗するようで(じゃあ、アベンジャーズのカバーで握ってるのは何なんだろ)。

 また、最近まで彼はマレキスにちょん切られた右腕の代わりとして、ムジョルニアと同じ炎で鍛えられたブラック・ウル製のものを使用していたが、こちらもムジョルニアが失われたのとほぼ同時期に喪失。今回の新シリーズでは新たに金ぴかな腕を用意する。

 実はソーっていまいちピンとこなくてこれまでノータッチだったので、良い機会だし私もこの新シリーズから読み始めてみようか。

9.ANT-MAN AND THE WASP

WRITTEN BY MARK WAID
ART BY JAVIER GARRON (INTERIOR) & DAVID NAKAYAMA (COVER)


Ant-Man & the Wasp (Ant-Man & the Wasp (2018))(今後発売される合本)

 これはなんというか、刊行時期や登場する面子などどこから見ても6月に公開される映画の販促というか当て馬というか。

 一応ライターは先日ドクター・ストレンジのところでも言及したヒットメイカー Mark Waid になっているものの、正直本作に対するマーベルの本気度が窺い知れないので不安もないではない。

 中身のアートを担当する Javier Garron についてもまだカバー含めて30冊かそこらしか手がけてない新人で実力は未知数。ただ本誌のプレビューを見る限りでは中々親しみやすい絵柄なので、今回のミニシリーズを足がかりに今後のし上がって欲しい期待の星ではある。

 アントマンって MCU の映画は結構アタリだったものの、コミックだとイマイチ不遇の存在と言おうか。おそらくアベンジャーズの初期メンバーで長期ソロタイトルがないのはアントマンくらいかと。平然と代替わりしてるし、これといった名エピソードみたいのもぱっと思いつかない(良い機会だから今度漁ってみるか)。

 肝心の中身についてはミクロの世界に遭難したスコットをナディアが救助にいくというような比較的スタンダードな内容になるみたい。
 少なくとも快作になることは間違いないので、それ以上にあっと驚く展開を見せて名作になるかが注目どころ。
 
 まあ、ミニシリーズという形態の手軽さや、クリエイター陣の面から見ても大外れということはまずあり得ないので映画を観る前でも後でも興味が湧いたら物は試しに手にとってみると良いかもしれない。


10.TONY STARK: IRON MAN #1

WRITTEN BY DAN SLOTT
ART BY VALERIO SCHITI (INTERIOR) & ALEXANDER LOZANO (COVER)

 およそ10年に渡りスパイダーマンのメインライターとして活躍してきた Dan Slott が AMAZING SPIDER-MAN#800 を持って退陣。今度はアイアンマンを担当する。
 彼のスパイダーマンは連載開始当初からピーターがシリコンバレー系企業に入社してスパイダーマンが最先端テクを駆使するという展開だったし、特に最近は社長になるなどアイアンマンやりたいオーラをばしばし醸してたので適材適所かと。

 インテリアを担当する Valerio Schiti はこれまでガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシーなどを担当してきた新鋭。すっきりとした感じの見やすい絵柄で、人はスマートに、マシンやクリーチャーはスタイリッシュに描く印象。
 インタビューなどによると新シリーズでは様々な形態のアーマーが登場するようだが、彼はガーディアンズみたいな SF も手がけているので心配はない。

 肝心のあらすじに関してはまだほとんど明らかになっていないものの、今のところ Slott は長期の連載を見据えて新旧大小様々なヴィランを想定しているとか。
  Slott は元々コメディ系のライターなので今回もユーモアを交えたテンポの良いストーリーが期待できる。
 ある程度のクオリティは担保されているものの、これは読んでみないとわからないかな。


 以上が今回の5作。
 『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』も公開され、アベンジャーズの新シリーズは既に開始されている。
 これまでマーベルのコミックを読んだことがなかった人は今がビッグチャンス、既に読んでいるという人もこの機会に作品の幅を広げてみよう。

 ではまた3回目まで。