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VENOM, VOL.2: RUN (MARVEL, 2003 - )


Venom Vol. 2: Run (Venom (2003-2004))

 抜けていた第2巻を補完。

あらすじ

 北極圏基地を脱走した Venom 共生体は宿主を転々としながら人里へ向かう。基地での惨事を唯一生き残った Patricia Robertson は謎の黒服エージェントに抱えられながらその行方を辿るが、共生体を追跡しているのは彼らだけではなかった。対共生体装備に身を包んだ女2人組の正体とは…。事態は混沌としていく。

新世紀ヴェノムゲリオン

 遥か前に第1巻と第3巻をレビューした2000年代の Daniel Way による VENOM シリーズ。当時は手元になかった第2巻をスキップしたが、この度ようやく読む機会に恵まれたので、『 FRESH START 』で VENOM の新シリーズも始まって丁度良い機会だし、今更ながら取り上げてみることに。

 合本は大きく現在を描く前半『 RUN 』編と、第1巻より前の過去を描いた後半『 PATTERNS 』編からなる。
 クリエイター陣は前巻と基本的に変わらない。強いて言うなら後半のカバーはそれまでの Sam Kieth に代わって Mike Deodato が手がけていることくらいだろうか。

 まず前半の『 RUN 』編では第1巻の続きで北極圏基地を脱走した Venom 共生体、惨事を生存した Robertson と黒服、怪しげな特殊部隊風ネーチャン2人組、それに偶然共生体が襲撃した田舎町に居合わせていた Wolverine による混戦が描かれる。
  Logan の登場はこれまで MARVEL 要素が皆無だったので嬉しいことは嬉しいものの、普通に考えれば変幻自在の共生体をどんなにアダマンチウムで切りつけたところであんま意味はないわけで。案の定ある程度立ち回った後はとばっちり食らったり Venom 化したり…相変わらずヒーリング・ファクター様々です。
 
 他のプレイヤーに関しても、ハイテクネーチャン達が(結構あっさりやられるけど)金に糸目をつけない方法で捕獲を試みたり、 Robertson と黒服が携帯電話1つで頑張ったりと中々の健闘。小気味よいテンポで派手な戦闘が続くのであまり間延びした印象は受けない。
 前巻は閉鎖空間においてとにかく共生体に追われるばかりだったのが、今回はそれなりにパワーバランスが改善したのも良い変化。読んだ感じは前巻が『エイリアン』だったのに対し、今回は同じモンスターホラーでも映画よりゲームに近い。


 一方、後半の『 PATTERNS 』編では時間を遡り、舞台は Marvel ユニバースの本拠地ニューヨークへ。 Eddie Brock とくっついていた共生体がいかにしてシリーズ開始時の北極圏へやって来たかを描く。 Spider-man は勿論のこと、 Fantastic Four や Nick Fury などといったお馴染みの顔(で次巻も活躍する面々)も続々登場する。

 今までこの巻を飛ばして読んでいたため分わからなかったことの経緯もある程度明らかになる一方、共生体を北極圏へ送り込んだ連中(前半に登場したハイテクネーチャン達の組織)やリード・リチャーズが宇宙で採取した小さなマシンの集合体だと判明した黒服などについてはやっぱりわからないまま。
 この煮え切らない感覚、何かに似てる…。
 あ、エヴァだ。
 この物語の当事者はちゃんと描いておきながら、それを上の方で操っている偉い人達に関する情報がほとんど与えられないというパターンは『新世紀エヴァンゲリオン』とよく似ている。

 はい、そんなわけで今回の VENOM シリーズはセカイ系アメコミという結論に落ち着きました。
 そんなストーリーに対する柔軟性が高い Venom が今度始まる新シリーズでどんな活躍を見せてくれるのか期待してみたい(無理矢理繋げた感)。

 これ、マジで他シリーズでフォローしてないんだろうか…?

こんな人にオススメ

・セカイ系が好き

・とにかくヴェノムの戦闘が観たい

・ホラーゲームとかが好き




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