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感想:『ブラック・ライトニング』ファースト・シーズン


Black Lightning: Year One (New Edition)

  NEFLIX で配信中の DC 原作『ブラック・ライトニング』ファースト・シーズンを観たよ面白かったよという感想文。

あらすじ

 体から雷撃を放つ能力を有するジェファソン・ピアースは、かつて街を守るヴィジランテ”ブラック・ライトニング”として戦いの日々を送っていたものの、家族の将来を慮ってスーツを脱ぐことを決意。時が経ち、現在の彼は2人の娘を持つ父親として、また地元高校の名物校長として日々を満喫していた。だが”ブラック・ライトニング”のいなくなった街では治安と差別の問題が深刻化し、”100”なるギャングが地域を牛耳っていた。やがて事件に巻き込まれた娘が”100”のメンバーに誘拐された時、ジェファソンは再びスーツを身につけることを決意する。

概観

 ブラック・ライトニングって多分 FINAL CRISIS: RESIST くらいでしか読んだことがないキャラクターだったので(娘のジェニファーは JSA に出てたけど)ほぼ知識なし。正直なところ半信半疑で観始めたのだが思った以上に丁寧な作りをしていて驚かされた。
 

何気にリアルな設定

 まずブラック・ライトニングことジェファソン・ピアースの置かれている環境。
 それなりに成長した(しかも片方は既に成人)子供が2人いる上に地元校の校長先生、奥さんとは一応離婚しているけど円満どころか隙あらばイチャイチャしだす熱々っぷり。
 これだけ生活基盤が安定しているヒーローって中々新鮮です。取ってつけたように幼い子どもがいるとか大企業の御曹司であるとか、あるいは逆にトンデモ貧乏といった設定よりもよほどリアリティがある。
 というか改めて考えてみるとこれくらい生活基盤がしっかりしてないとヴィジランテ活動なんてできないわな。
 ジェファソンの育ての親でブラック・ライトニングのスーツも開発したギャンビの存在は若干ファンタジーだが、アローやスーパーガールと同じ世界観(当初は別みたいな話だったけど方針転換したみたい)であることを考えればアリかと。

鬱陶しくないテーマ

 また、本作はテーマの扱い方も上手い。
 このシリーズが昨今の米国で再燃しつつある人種差別問題を強く意識した作品であることは明らかだ。こういった流行りの社会問題をテーマに取り入れた作品はそのメッセージ性がノイズとなって物語の流れを阻害してしまうリスクを常に孕んでおり、自滅してしまうものも少なくない。
 しかし、本作については第1話の序盤から黒人差別社会を印象づけ、その後も度々手を変え品を変え取り上げるものの鬱陶しさはない。
 テーマが物語にしっかりと組み込まれておりバランスの良い社会系エンターテイメントとなっている。

スーパーヒーロー物として

 スーパーヒーロー物という観点で観てもこのシリーズはかなり優秀な部類だろう。
 一般的にスーパーヒーロー物は能力や行動が先行している場合が多く、何のためにスーツを身に着けて活動しているのかと分析してみたら、何となく社会を守っているようなことがままある。
 だがブラック・ライトニングは違う。ジェファソン・ピアースを取り巻く人種差別社会という環境は彼に保守的なヒーローであることを良しとしない。少しでも平等な社会を目指して進歩を促すシンボルとなることを要求する。
 ヴィジランテとしての彼の先進性はテレビドラマという媒体だから扱えるものだろう。これを映画でやろうとすれば内容を数時間に凝縮した上に派手さを要求されるためどうしても急進的に映ってしまう。
 そういう意味でもこのシリーズは MCU や DCEU でも成し得ないことをやっていると言える。


 大まかに完結しつつもセカンド・シーズンへ向けた布石も敷いた締めも好感が持てたし、今から続編が楽しみな作品だ。
 これを機に DC の原作コミックもチェックしてみようかな。


Black Lightning: Cold Dead Hands