先週から始めた『アメコミ論壇時評(仮)』。この1週間でネットなどで見たインタビューやコラムを見て、それに対して個人的に思ったことを好き勝手に論ずるコーナーとなっております。
今週のラインナップはこんな感じ
”マーフィーバース”6か条
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記事元は CBR 。
更生したジョーカーがバットマンを社会的に追い詰める『バットマン:ホワイトナイト』。
そのの作者であるショーン・ゴードン・マーフィーがツイッター上で続編を作ることに意欲を示した際、読者への約束として6項目を掲げた。
それぞれを簡単に列記すると…
1.キャラクターが死んだらそれで終わり。蘇ることはない。
2.コミックはちゃんと予定通り発売される。
3.過去回想を例外として、ナレーションは使わない。
4.ヴァリアントカバーは基本なし。やっても2つまで。
5.1冊に1回はカッコイイ乗り物を出す。
6.物語はシンプルに。他のイベントやシリーズへの言及波及はなし。
3なんかは最近だとナレーション・バルーンを使うクリエイターはそんなにいないし、5についてもバットモービルなどの絵に定評がある彼ならではのお約束ごとだからいいとして、他はどれも昨今の業界、もっと言えば DC よかマーベルに耳が痛い話だろうなと思う。
天国の回転ドアにしろイベントのスピンオフにしろ文脈がしっかりしてるなら別に良い。
DC はリバース前もこのへんは結構しっかりしていた。
一方でマーベルはと言えば、特にこの5,6年は何をするにしても唐突で押し付けがましかったというか、いわゆる「壁に泥を投げつけてどれが壁にひっつくか様子見( Throwing sh!# against the wall, and seeing what sticks. )」を続けてきたようなところがあったから読者の不満が溜まってきたわけで。
ただ今回のマーフィーのみならず、ここ最近他のクリエイターもこうした問題に対して声を上げてきているので今後の業界正常化に期待できそうだ。
『Mr. インクレディブル2』製作に時間がかかったわけ
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記事元は IGN 。
『Mr. インクレディブル2』の監督であるブラッド・バードがインタビューで「スーパーヒーロー映画が氾濫し過ぎたためにどう差別化を図れば良いかわからず製作に時間がかかった」という趣旨の発言をしたとか。
『Mr. インクレディブル』に関してはあちこちでウォッチメンやファンタスティック・フォーのマッシュアップだと言われているものの、あれはあれで結果的に独自色を出せていたのではないかと私個人は思う。
予告編を見る限り、今回の映画ではMr.インクレディブルに「専業主夫」というアイデンティティを与えて差別化を図るようだが、単なるバックグラウンドの問題に収束せず、物語にも目新しいものがあれば嬉しい。
X-FORCE創刊裏話
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記事元は CBR 。
90年代に尖った作風と肉ダルマ系アートで業界を席巻したロブ・リーフェルドが FANDANGO のインタビューで「当時の X-MEN がメソメソしてばかりだったのに我慢ならなくて X-FORCE を作った」という趣旨の発言をしたことに関して。
クリス・クレアモントが中心となっていた頃のX-MENは良くも悪くもソープオペラと言われていたので、 X-FORCE みたいな劇薬は出るべくして出たという感じがある。
ただ劇薬は結局劇薬なので効果は長持ちしないし、読者が慣れる度に刺激を強くしていけばあっという間に飽きられてしまう。
リーフェルドの不幸はその刺激が頭打ちになった時点で業界全体が彼に追随してしまったことにより、彼が自身の作風から逃げ出せなくなってしまったことだ。
ジム・リーなんかも似たような境遇に陥りかけたものの、彼はフランク・ミラーの画風を取り入れるなど試行錯誤したことで一皮むけて今も変わらず高い評価を受けている。
この2人を含めた90年代の尖ったアーティストに関しては、ちゃんと分析した書籍やサイトが中々見当たらないので、そのうち自分で調べてみたいと思わないでもない。
FANDANGOのインタビュー全文は以下のリンクから
総括
前回に比べて今回はそれなりにバランスの取れた話題が取れたんじゃないかと。
今週はスーパーヒーローを扱う業界全体に関する問題が浮かび上がるような話題が多く、実際に自分の意見を書き出してみるといくらでも書けそうなものばかりだった。ここで書き足りなかった分は今後別の記事にして1つ1つ取り上げてみても良いかと。
それでは今週はこんなところで。多分また来週もやるのでどうぞよろしく。