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SUPERMAN UNCHAINED (DC, 2013 - )


Superman Unchained: Deluxe Edition (The New 52)

 超人と謂えど、人。

 テロリスト・グループ Ascension が地球目がけて放った衛星群を間一髪食い止めた Superman 。しかし、その内の1つが自分の知らない間に処理されていたことを知った彼は、その謎を追求すべく落下地点へ赴く。現場で謎の手形を見つけた彼はさらに米軍が関わっていることを察し、記者仲間である Lois Lane の父、 Sam Lane 将軍と接触を図る。

 いよいよデビュー誌 ACTION COMICS が前人未到の1000号を迎える、世界最初にして最大のスーパーヒーロー。
 ライター Scott Snyder も今度 Justice League を控えていることだし、色々な意味で今読むのに丁度良いかなと思って今日は本作をピック。 Jim Lee 、 Dustin Nguyen , Alex Sinclair といった一流アーティスト陣が本作の絵を担当している。

 以前にも述べたとおり、 Superman というキャラクターを描く場合には大きく分けて2つの方法が存在する。
 ”超人”である彼の”超”に着目するか、”人”に着目するか — 言い換えれば、彼を神として掘り下げるか、人として掘り下げるかだ。
 
 しかし単に切り口を明確にすれば良いという話でもない。
 彼を神として描く場合にはライター側の想像力が試されるし、人として描く際にはそのオーバーパワーっぷりが読者の共感を阻害する。
  Grant Morrison と Frank Quitely の ALL STAR SUPERMAN などは彼を徹底的に神として描き、その圧倒的な力を遺憾なく発揮させることで名作を紡ぎ上げたが、 Superman を”人”として描く場合はその力がむしろじゃまになる。
 故にライターの多くは彼の能力を一時的に剥奪するなど何らかの制限を与えることが多いものの、この手法は言ってみれば Superman の Superman たる理由を取り払う行為に等しく、あまり褒められたものではない。

  Snyder もまた本作で Superman を”人”として描くことを選んだが、 Superman の能力ではなく、相手にする脅威のレベルを調整することで、彼を地に足の着いた存在にしている。

 例えば建物の倒壊を防ぐ際、普通のライターであれば簡単に押し戻させてしまうようなところだが、 Snyder はここで彼に「力任せに押し上げては内部の構造が保たないし、凍らせてしまっては中にいる人まで氷漬けになってしまう…」などと、ああでもないこうでもないと考えさせる。
 圧倒的な力を持つ Superman でも心は人であるという特徴を活かし、単純な力技では対応できない危機を演出し、それに対する知的プロセスを描写することで読者への共感を促している。
 
  Superman と同じく太陽光をエネルギー源にしながら彼以上の力を備える新キャラ Wraith に関しても、この Superman 以上に人間離れした存在を登場させることで相対的に人間と Superman との距離を縮めることに役立っている。
 また、 Wraith は1938年に地球へやってきたことになっているが、これは実のところ ACTION COMICS #1 が発売された年となっており、 Superman のちょっとしたアナロジーになっているあたりもニクい演出といえる。

 本作は Superman を人間として描いた名作の1つとして将来的に語り継がれることだろう。


スーパーマン:アンチェインド (DC COMICS)(邦訳版)




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