Dark Nights: Metal: Deluxe Edition
つい先日終了したばかりの DC 大型クロス・オーバーイベント DARK KNIGHTS: METAL (以下メタル)。
このブログでもついさっきレビュー記事を挙げたばかりだが、正直バットマン界隈を中心に DC ユニバースを縦横無尽に展開するこの物語は長年の読者でも中々歯応えのある内容だ。パラレルワード「マルチバース」の概念をはじめ、物語の鍵を握る諸々に関して一定の予備知識がないと十分楽しめない可能性がある。
そんなわけで今回はまだ完結して日の浅い本作の合本が出る前に読んでおいた方が良い作品をいくつかピックアップして重要度順に紹介してみようと思った次第。
ネタバレも結構あるので以下自己責任でご覧頂きたい。
じゃあ、早速いってみよー。
1. BATMAN BY SCOTT SNYDER AND GREG CAPULLO & ALL STAR BATMAN
まず本作を楽しむ上で同じクリエイター陣による New52 時代の BATMAN シリーズ、そしてライターを務めたスコット・スナイダー氏による次シリーズ ALL STAR BATMAN は読んでおきたい。
とはいえ、前者だけでも50冊超ある内容を全て読むのは中々きつい。
なので中でも必読なのは3つ。
メタルで闇のマルチバースを支配するバルバトス、それを信奉する梟の法廷が初登場する THE COURT OF OWLS 編。
Batman Vol. 1: The Court of Owls (The New 52)
本作のキーキャラクターで何だかドラゴン化までしてしまうジョーカーとの関係に新たな一面が加えられる ENDGAME 編。
Batman (2011-2016) Vol. 7: Endgame (Batman Graphic Novel)
そして世界滅亡級の危機に対応する極秘部隊で長年ブルースを監視してきたというブラックホーク隊が登場する ENDS OF THE EARTH 編。
All Star Batman Vol. 2: Ends of the Earth (All-Star Batman: DC Universe Rebirth)
このあたりは最低限読んでおきたいところだ。
2. CRISIS ON INFINITE EARTHS
メタルのベースとなっている DC ユニバースの並行世界「マルチバース」はこの作品を起点にしている(厳密な原点はもっと以前からあるけど)。 DC ユニバースの様々な並行世界に跨る危機を描いたこの名作は、同時に近年の DC ユニバースの礎を理解するための解説書にもなっている。
こちらに関しては本ブログの別記事でも紹介しているので参照されたし。
3. GRANT MORRISON'S BATMAN SAGA, FINAL CRISIS, AND THE MULTIVERSITY
さて、上記 CRISIS ON INFINITE EARTHS をベースにして、それをさらに深く掘り下げた人物が鬼才グラント・モリソンである。メタルの幕間 DARK KNIGHTS RISING: THE WILD HUNT にもクレジットされている彼が DC で長年紡いできた作品の多くはこのマルチバースという概念で緩く繋がっており、本作にも大きく影響を及ぼしている。
中でもコウモリの邪神バルバトスとバットマンとの関係に切り込んだ BATMAN, BATMAN AND ROBIN, THE RETURN OF BRUCE WAYNE といった彼のバットマン・サーガ、マルチバースの危機が正義と悪の概念的闘争に発展する2008年のクロス・オーバー FINAL CRISIS とそのスピンオフ SUPERMAN BEYOND 、そしてその続編ともいうべき THE MULTIVERSITY といった作品は読んでおきたい。
とりわけ THE MULTIVERSITY はマルチバースの俯瞰図としても使えるため上記 CoIE と同程度の重要度を持つかと。
4. JUSTICE LEAGUE: DARKSEID WAR
現在 DOOMSDAY CLOCK で大忙しのジェフ・ジョーンズ。彼が手がけた New52 時代のジャスティス・リーグ最後のエピソードはメタルにがっちり食い込んでこそしないものの、赤ん坊の姿をしたダークサイドやアンチモニターの脳みそなど、それなりに直接的な影響を及ぼしている。
DC ユニバースの現在位置を確認するという意味でチェックしておいて損はないだろう。
5. SANDMAN
今でこそ絶交状態になっているものの創刊当時の VERTIGO インプリントは、 DC ユニバースの裏世界を描くための舞台として緩く繋がっている作品が多かった。このニール・ゲイマンによる傑作シリーズも一応 DC ユニバースの一部として描かれており、ごくごく稀に作中のキャラクターが DC 作品にゲストとして登場することがある。
メタルに登場するダニエルも SANDMAN で主人公だったモーフィアスの後を継いで夢を司る存在となった人物(一応元人間だから「人物」で間違ってない筈)。
滅多に姿を見せない彼が登場するというだけでもファンには垂涎ものだが、さらに今回は重要人物としてどっぷりストーリーに関わってくる。
普段は DC ヒーローでも指一本触れられないくらい高みにいる存在として描かれる彼までもが痛手を被ることから、本作で描かれた脅威がどれほど重大だったかを窺い知ることができる。
The Sandman Vol. 1: Preludes & Nocturnes 30th Anniversary Edition
以上がメタルを楽しむため最低限チェックしておきたいベスト5である。
番外編
では、ここからは番外編としてキーパーソンとして描かれつつも紹介するにふさわしい作品が見当たらなかったキャラをまとめて紹介しようと思う。ここで挙げる作品にはぶっちゃけ筆者も手を付けてないものも少なからずあるのでご容赦願いたい。
STARRO THE CONQUER
鳴り物入りでメタル#4に登場した文字通りのビッグ・スター。マインドコントロールに長けているこの異星生物は実のところこのジャスティス・リーグが初登場した THE BRAVE AND THE BOLD #28 の敵役でもあり、その後も JLA: SECRET FILES #1 などちょいちょい登場してはヒーロー達を悩ませてきた。これまでは小型の自分を相手の顔に貼り付けなければ操ることができなかったが、今回はパワーアップしてアイコンタクトを取るだけで洗脳可能に。態度も生意気になってヒーロー達を一層苦しめる存在となった。
…え、今度 JL と共闘しちゃうの?
Justice League of America: The Silver Age Vol. 1 (Justice League of America the Silver Age)
PLASTIC MAN
今回の話で影の主役だったかもしれないこの変幻自在ヒーローはファンからの人気も高く、一時はジャスティス・リーグのメンバーとして活躍したこともあるような存在であるにも関わらず、その姿が見られる作品は何気に限られている。
単独タイトルも古い作品は彼が DC に組み込まれる前の話だし(彼は元々 Quality Comics という別の会社のキャラクター)、近年の傑作と言われる Kyle Baker によるシリーズも現在は入手困難…。
本作の勢いをきっかけに TERRIFICS でチームの一員として登場し、また単独で活躍する新ミニシリーズの刊行も決定したので今後の活躍に期待したい。
MR. TERRIFIC
今回ほぼ JL の一員として大活躍したのがこの人。バットマンも全幅の信頼を寄せていたフシがあり、ファンの数を増やしたことだろう。
しかし残念ながら彼も中々活躍の場に恵まれない。 New52 以降もあちこちに顔を出したり自タイトルを獲得したりはするものの、気が付けばどこかへいなくなっているような状態。メタル登場時には近年の設定がかなりクリーンな状態にまで還元されているようなので(しばらく並行世界を渡り歩いていたということを知っていれば十分)、新タイトル TERRIFICS など今後の登場に期待するのが無難だろう。
こういうのもないではない: Mister Terrific Vol. 1: Mind Games (The New 52)
HAWKMAN & HAWKGIRL
メタルでも経歴がややこしい印象を受けたこのカップル。転生を繰り返しては設定がコロコロ変わるため、数いるDCヒーローの中でも特に歴史が複雑だと称されることも。
彼らや上記のミスター・テリフィック、ドクター・フェイトなどはどちらかといえばジャスティス・リーグではなくジャスティス・ソサエティのメンバーなので、彼らの活躍が見たければ最近新装版も出たジェフ・ジョーンズ時代の JSA を読むのがオススメ。ホーク・カップルだけなら HAWKMAN シリーズもある。
DETECTIVE CHIMP & CHALLENGERS OF THE UNKNOWN
メタルで一気に株を挙げたディテクティブ・チンプ、そしてほとんど姿を現さないものの基地だった山が今回戦場となるチャレンジャーズだが、はっきり言って彼らが主だって活躍したのはだいぶ前。 New52 を跨いで設定がある程度リセットされている可能性も高いため、今後の動向を追っていったほうが無難かも。チャレンジャーズなんかはスナイダーによる新シリーズも始まるし、チンプも今回これだけ活躍したのだから DC が放ったらかしにはしないだろう。
勿論、それまで SHADOWPACT などで昔の活躍を読むのもアリ。
Shadowpact VOL 01: The Pentacle Plot
Challengers of the Unknown by Jack Kirby (Challengers of the Unknown (1958-1978))
…とまあこんなもんか。 Nth Metal のこととかもっと突っ込めない気もするが、ある程度は作中でも解説しているので今回はこの辺りで。
メタルは近年稀に見る満足度の大型クロス・オーバーイベントなので、是非多くの人に手にとって頂きたい作品。本記事がこの作品の面白さを理解する助けになれば幸いです。
ではまた!