VISUAL BULLETS

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I HATE FAIRY LAND, VOL.1: MADLY EVER AFTER (IMAGE, 2016)

 もうおとぎ話はたくさん!


I Hate Fairyland #1(Kindle)

 あるところに Gert という可愛らしい少女がおりました。彼女はある日(何ということでしょう!)、部屋にぽっかりと空いた穴に吸い込まれて魔法の世界 Fairyland へやってきてしまったのです。雲のようにふわふわな髪をした女王 Cloudia にハエの Larry をあてがわれた Gert は、元の世界に戻るため魔法の鍵を探す旅に出るのでした。………それから30年!いまだに魔法の鍵を見つけられない Gert は外見こそ全く変わらないものの中身はすっかり大人になっていた!キラキラした魔法もチカチカする妖精にもうんざりな彼女は今日も魔法の鍵を(どんな手段を使ってでも)探し求める!

  Marvel 発「オズの魔法使い」シリーズのコミカライズでアートを担当してきた Skottie Young がライティングも担当する Image からのオリジナル作品。同作でカラーを担当した Jean-Francois Beaulieu も引き連れているため、ぱっと見絵柄はだいぶ似ているものの、中身はきらきらふわふわとは正反対。
 インタビューなどによると本人も長年キラキラふわふわした世界に携わってきて、そのやや子供だまし的な部分が目に付いてきてたとか。本作ではそれに対する思いの丈と言おうか鬱憤を大いに晴らしており、お星様は木っ端微塵に吹き飛ばされ、小人や動物たちは次々と血祭りに上げられるという反転ぶり。
 
 かなり過激な内容ではあるものの、勿論それだけで本作が成立しているわけではなく、ストーリー構築という観点で見てもかなり優秀な部類に含まれる。
 緩く繋がりつつも基本的に1話1話キリのいいところで終わる本作は、中にパロディやギャグがぎっしりと詰まっており、ページをめくる読者の手を一切休ませない。
 これは先日話した LOBO で Keith Giffen が使用した物語手法とかなり似通っており、もしやと思い Young のホームページなどを訪れると、やはり彼がそのファンで大きな影響を受けたことについて言及している。

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 他方、本作が LOBO と大きく異なる点は Simon Bisley のアートがかなり大人向けであった LOBO に対し、 Young と Beaulieu のアートは前述の通りオズシリーズの絵柄そのままであるため、一見子供向けのファンタジーとも見紛うキャラのバイオレンス描写が一層引き立つようになっている点だ。日本で喩えるならプリキュアに突然ゴルゴが参入してきたような感覚とでも言おうか。

 このあたりは一見スーパーヒーローに見えて実はチャランポランな暗殺者である Deadpool なんかとも方向性が似通っており、納得の采配と言おうか、 Young は今度 Marvel で DEADPOOL の新シリーズをライティングすることになっている。

 子供の頃夢中だったものでも大人になってから改めて見ると「何でこんなもんにハマってたんだろ」と思ってしまうものは少なくない。
 そんな風に感じたことがある人は本作を是非手にとって頂ければ、大いに共感できること請け合いだろう。


I Hate Fairyland #2(Kindle)


I Hate Fairyland #3(Kindle)


I Hate Fairyland #4(Kindle)


I Hate Fairyland #5(Kindle)


I Hate Fairyland 1: Madly Ever After(TPB)




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