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SUPERGOD (AVATAR, 2011)

 ”超人”という神が人類にもたらすものは……。


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 壊滅したロンドンで米国の友人と通信する1人の男。彼の口から語られるのは、1955年にイギリス政府が3人の宇宙飛行士を極秘裏に宇宙へ送り出したことに端を発する、各国の超人開発競争の歴史だった。やがて神として崇められるようになったその者達が人類にもたらすのは繁栄か、滅亡か。

 お久しぶりでございます。最初、およそ半年ぶりのレビューなので MARVEL か DC の作品がいいかとも思ったものの、直近で読んだものでは記事を作りやすいものがなく。せめてスーパーヒーロー物が良いかと思って本作を選んだものの、改めて考えると超人物ではあるけどヒーローじゃねえな、と。むしろ同じ AVATAR から出ている ÜBER なんかに近いか(そういや GOD IS DEAD なんかもあったな)。

 本作は各国で開発された超人達がやがて人のコントロールから解き放たれた”神”と化して、各々の思惑に基づき行動し、対峙する過程を描いた仮想歴史物だ。

 ライターは本ブログでお馴染み Warren Ellis 。今回も現実世界を縦糸に、自らの考察を横糸にして独自の世界観を作り上げている。やろうと思えば単行本数冊にも及びそうな物語を1冊に集約することで簡潔ながら引き締まったストーリーとなっている。

  Garrie Gastonny らによるアートも物語の内容に反してグロテスクになり過ぎず、超人達もスーパーヒーローのような洗練された出で立ちであるため中々見やすい。 Gastonny に関しては、普通に MARVEL とかのヒーロー描いても上手いだろうなあと思っていたら案の定 Deviant Art のページには格好良い Winter Soldier らの姿を見ることができて眼福眼福。近い将来に目覚ましい出世を遂げそうな才能と言えよう。

 本作に登場する超人達はまず核兵器の比喩として捉えることができる。人類が己の目的のため生み出しながら、だが結果的に自分達を超越してしまった存在。得体の知れない存在となってしまったそれが、しかし逆にそうなったが故に人の信仰を集め、やがて君臨していく様子は滑稽でもあり恐るべきものだ(語り部の淡々とした口調がまた皮肉を引き立たせる)。

 しかしそれ以外にも、本作における超人と人類の関係は、例えばアイドルとファンの関係性などにも適用できる。艦隊から刀剣まで、あらゆるものに人格を与えて愛でる文化が根付いている日本人にはとりわけ興味深いテーマであったといえよう(他方、面白いことに作中では各国から超人が出現する中、日本が巨大ロボットの1つも繰り出してこなかったことが言及されている)。

 私達人間は何かと縋ることのできる存在を求める。その対象は時として”神”と呼ばれ、時として”キャラクター”と呼ばれる。中身に差はほとんどない。
 だがそれに依存して自らを超克する努力を忘れてしまえば、そこに希望はない。そのことを忘れてはならないのだ。
 

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 …というわけで、しばらくは不定期更新で再開したいと思いまーす。