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UNIVERSE: THE PERIODICAL OF COSMIC WONDER (PANEL SYNDICATE, 2014 - 17, #1-5)

 現在にわかに注目を集めているユーモア作品。

 はるか未来。とある家具企業に勤める Andrew はある日、企業のトップである Wortham から新開発のタイム・トラベル装置を使い銀河の始まりへ戻り、今後生まれるあらゆる原子に会社の商標が入るよう細工することを命じられる。また同じ頃、異星人とのコンタクトを図るべく地球を旅立った一行の1人である Arthur はひょんなことから肉体を持たない知的生命体と遭遇するが、その姿は惑星の外気を吸った自分以外の人間には見ることができず……。

 等々、銀河のあちこちで起こる小さくも大きな5つの出来事が描かれる本作。刊行しているのは Brian K. Vaughan や Marcos Martin らがネットで運営するコミックダウンロードサイトPANEL SYNDICATEで、同じくそこから刊行されている BARRIER や PRIVATE EYE と同様、無料もありの自由な価格設定でダウンロード可能となっている。

 クリエイターの Albert Monteys はスペインで活躍するコミック作家であり、以前から Matt Fraction などの口からも言及されてきた何気に知名度の高いクリエイター。
 収録されている5編は上記あらすじに上げた2編の他、プログラムされた人間を愛しすぎてしまうロボット達の暴走や、別の惑星で肉体を捨てて意思だけの存在になろうとする種族に抗う最後の1人を描いたもの、あるいはタイムマシンの実験中に起こった事故により少しずつ肉体と精神の間に時間差が広がっていくようになってしまった女性の悲劇など、ユーモラスながら決してコメディではない微妙なバランスのもとに作り上げられた、どれも逸品と言える。

 真面目にスーパーヒーローとスーパーヴィランのガチンコファイトをやり続けるのはそれはそれでありだが、私などはむしろ本作のように遊びに満ちた作品の方が好みだ。
 別にあっと驚くようなストーリーを作るだけなら別にコミックという媒体である必要性はない。小説でもアニメでもやれる筈だ。それでも敢えてこのコミックという表現方法を選んだのであれば、ストーリーやキャラクターだけでなく、絵と言葉とコマをどのように駆使するかにも工夫を凝らす必要があると私は考えるからだ。
 本作で Monteys は一見1話1話をストレートに描いているように見えて、よく見るとコマ割りの仕方などにかなり工夫を凝らしていることがわかる。
 こういう楽しさを見つけられる作品こそ”コミック”と呼ぶにふさわしいのだろう。
  Monteys の他の作品もちょっと探してみようかな。