VISUAL BULLETS

原書レビューを中心に、MCUからクリエイターのトリビアまでアメコミに関する様々な話題をお届け

THE WILD STORM VOL.1 (DC, 2017, #1-6)

 リブートで描かれる全く新たな世界。


The Wild Storm Vol. 1

 ある日、何者かの手により自社のビルから投げ出された IT 産業の寵児 Jacob Marlowe は、しかしサイバネティック・スーツに身を包んだ正体不明の女性によって救出され一命を取り留める。事件を受け、元は諜報機関として設立されたのが今や世界を管理するにまで成長を遂げた政府組織 International Operations 、そのトップに就く Miles Craven は調査を行ったところ、その女性が自分達の組織に所属する Angela Spica であると知る。組織で極秘裏に保管していたテクノロジーを流用した彼女を始末するべくすぐに暗殺部隊を差し向ける Craven だったが、既に彼女のもとへはその身柄を保護すべく Marlowe が差し向けた隠密部隊 — wildCATS が辿り着いていた。

 個人的には今年最大の出来事かもしれない、まさかの WildStorm 復活。それもかつての立役者 Warren Ellis による全面監修のもとでの0からの再起動。かつての Wildstorm ユニバースをモチーフとしながらも全く様相の異なる作品に仕上がっている。
 
 アーティストは作画に Jon Davis-Hunt 、それにカラーが Ivan Plascencia 。どちらも初めて目にする名前だったものの、1冊目で Angela Spica が Engineer に変身&飛翔するシーンだけで一気に引き込まれた。カバー1つ取ってもとにかくスタイリッシュでどれも格好良い(個人的にはやっぱり#3の Jenny Sparks とかがたまらないっす)。
 Ellisは今回 Wild Storm を新生するに当って、一般的なスーパーヒーローのようなコスチュームは避ける一方で、だが印象的なデザインの服飾デザインをと指定したそうな。流石はかつて作中で例のピチピチな衣装を”全身コンドーム”と称した彼です。
 
 国際的な軍事陰謀論や世界に蔓延しつつあるパラノイアを一緒くたに詰め込んだという本作。
 最初のアークとなる今回は Angela Spica の出現に端を発して International Operations や Skywatch 、それに Marlowe の抱える wildCATS チームなど各方面が動き出す様子を丁寧に描いており、かつての STORMWATCH や AUTHORITY の目まぐるしいスピード展開よりじっくり話を広げている風だ。とは言うもののキャラクターが緩慢というわけでは決してなく、適材適所に配置された彼らは各人の役割をしっかりこなしている。
 つまり、それだけ話の規模が大きいのだ。そのことを証明するかのように本巻ではぱっと見イベント的な出来事が少ない割に緊張感と言おうか不安な空気が常に張り詰めている。バックグラウンドで何かが着実に築かれ始めているのだ。

 目下24冊の本シリーズとは別に、3つのスピンオフによる展開が想定されているという新生 Wild Storm 。この新たな世界観が今後2年間でどのように私の頭を吹き飛ばしてくれるのか。今から楽しみで仕様がない。