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HELLBOY VOL.6: STRANGE PLACES (Dark Horse, 2006)

 えーと、まずはごめんなさいというか。


Hellboy Volume 6: Strange Places

  B.P.R.D. を離れて単身アフリカの地へやって来た Hellboy はそこで Mohlomi なる不思議な祈祷師と出逢う。彼に導かれる内に海へ辿り着いた Hellboy だったが、波打ち際では海の魔女 Bog Roosh に願いを叶えて貰うべく彼を罠にかけようと人魚の3姉妹が待ち構えていた。時の終わりまで見通すという魔女の口から語られる未来とは。そして奸計に嵌り水底に沈んだ Hellboy の運命や如何に……。(『 THE THIRD WISH 』編)

 前巻前々巻とやれ終章だやれシーズン2だとかドヤ顔で言っていた私ですが、本巻の解説に拠るとここまでの話で Hellboy の物語は第1章なのだとか。恥ずかちー。
 まあ、でも雰囲気的にはこれまで跋扈していたナチスの皆様やロシアの怪僧らの気配がほぼ一掃されたこととか、民話伝承をモチーフにしたオリジナル色がかなり強くなったことだとかから言っても個人的にはもう新章に突入していると見做してもいいと思うんですよね。
 ……うん、もう章立てとか区切りとか考えるのやめておとなしく話を追っていくことにするよ。

 内容としてはあらすじにある人魚3姉妹の悲哀と絡めて Hellboy と海の魔女の対決が描かれる『 THE THIRD WISH 』編と、本作の世界観の内実が明らかになる『 THE ISLAND 』編との2編。面白いことに刊行されたのは前者が2002年、後者が2005年となっているものの、作中でもこの2編は同様の時間を隔てた地続きの物語となっており、 Hellboy はこの空白期間をずっと幽霊達と飲み明かしていたことになっている。こういうさりげない遊びというか工夫が本シリーズの魅力の1つだったりする。

 また後者の『 THE ISLAND 』編については Mike Mignola にとってもかなりの難産だったらしく2,3度描き直したとかで、合本の巻末にその描きかけ原稿を確認することができる。その甲斐あってというべきか、これまで謎だった Hellboy の石籠手に関する情報や、今まで魔女や魑魅魍魎どもの口から散々臭わされてきた本作世界観の始まりであるといったかなりシリーズの根幹に関わる部分がだいぶ開示されて中々の読み応えあるエピソードとなっている。個人的にもこういうスケールのでかさは大変私好み。
 きっかけは折しも実写映画版の公開を機に石籠手で封印されていた Ogdru Jahad の全容が明らかになってしまったため、コミックでもやっちまおうと思ったからだとか。何にしろ、これによりようやく Lovecraft や Poe などといった先駆者からの本シリーズを大きく切り離すことに成功している印象を受けた。

 派手な戦闘シーンも少なくない中、しかし鬱屈した雰囲気を拭えない本巻からは今後の展開に向けたドラムビートが確かに聞こえてくる。


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