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LEGION OF SUPER HEROES: THE GREAT DARKNESS SAGA (DC, 1982, #284−296 & Annual #1)

 清々しいまでのネタバレ全開カバー。


The Legion of Super-Heroes: The Great Darkness Saga (New Edition)

 30世紀の未来で Superman にインスパイアされた若き特殊能力者達によって結成された正義のチーム Legion of Super-Heroes 。地球を拠点とする彼らは星々が手を取り合うことのできる宇宙を目指して日々銀河のあちこちで巻き起こるトラブルや犯罪者達に立ち向かう。だがそんな彼らの知らない宇宙の片隅で1つの闇が長きに渡る眠りから目覚めつつあった。眷属を従え急速に力を付けた暗黒はやがて Legion 、そして宇宙全体を脅かすことに……。

 DCで屈指の名作とも数えられる遥か1000年先の銀河を舞台にした若きスーパーヒーロー達の活躍を描く本作。およそ35年前の作品ながら現在読んでも全く色褪せていないことにまず驚かされた。
  Legion of Super-Heroes (このハイフン重要!)といえば1958年の創刊以来2013年頃までほぼ休みなく連載が続いていたDCの古参タイトルでコアなファンが多い一方、そのキャストの多さや世界観の広さなどから新規参入者には中々ハードルが高く、またどこから読み始めてよいかもよくわからない典型的な「アメコミ」の代表格でもある。かくいう私も Legion とは馴染みが薄く、彼らがメインの作品はおそらく以前ここでも紹介したことのある FINAL CRISIS: LEGION OF THREE WORLDS くらい。
 そんなもんだからいくら名作といえど2作目となる本作を突貫工事みたいな形で読み始めることに一抹の不安も感じなかったといえば嘘になる。しかも、実際読んでみると初っ端から「 Bouncing Boy が殉職したばかりの Invisible Kid の像の前で恋仲にある Duo Damsel とチームから脱退する決意を固める」なんて展開。むむむ……。 
 こりゃ読み進めていく内にますます頭がこんがらがるんじゃないかと思っていたら……案外すんなり頭に入ってくるんですわ、これが。
 多少予備知識があったことは事実なものの、それ以上にやはり Paul Levitz のライティング、それに Keith Giffen や Larry Mahlstedt らによるアートに拠るところが大きい。各メンバーの能力はシンプルながら印象に残りやすいものだし、身を包んでいるスーツも見栄えが良く、似たようなものは1つもない。ドラマ・パートでも1人1人の登場人物が自分だけの”声”を持って書き分けられている。

 未来を舞台にした作品は往々にしてディストピアになりやすい。そりゃそうだ。正常に機能している未来よりも欠陥を抱えた未来の方がはるかに物語は作りやすいだろうし、世界観の構築についてのごまかしも利く。
 そんな中、ユートピア的未来観を舞台に活躍する Legion of Super-Heroes の姿は、かつて彼らが Superman にインスパイアされたのと同じように、ページの外の私達をインスパイアしてくれる。だからこそ、こんなにも多くの読者が REBIRTH における彼らの復活を待ち望んでいるのだろう。
 復活したあかつきには是非とも読んでみたい。