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JUSTICE LEAGUE OF AMERICA: ELITISM (DC, 2004, #100)

 伝統か、進歩か — 2つの潮流がもたらすものとは。


本記事で紹介する内容を含む原書合本版(Amazon): JLA Vol. 8 (Jla (Justice League of America))

 ”目には目を”を標榜し、殺人さえ辞さない過激なスーパーチームEliteが復活する。新たにチームを率いるのは、今は亡きManchester Blackの妹で全身を武装したサイボーグのVera Black a.k.a Sister Superior。ホワイトハウスを襲撃し世界の支配権を要求するEliteに立ち向かうべくすぐさま駆けつけるJLAだったが、彼らの前に敗北を喫してしまう……ように思えたが?

 前回のACTION COMICS #775 “WHAT’S SO FUNNY ABOUT TRUTH, JUSTICE, AND THE AMERICAN WAY” の続編とも言うべき作品。メイン・クリエイター陣もほぼ変わらず、ライターにJoe Kelly、ペンシルにDoug Mahnke。前回でインク担当だったTom Nguyenも続投。
 続編とはいったもののAC#775と本作との間にはもう1本別のエピソードがあったようで、前回Supermanに煮え湯を飲まされたManchester Black(とオリジナルのElite)はそこで彼に再挑戦 — Loisを誘拐及び偽装死させてSupermanがぶちぎれるか試す — するものの、失敗し自害した模様。
 代わって今回のEliteチームは妹のVeraが新たなリーダーとして彼の後を継ぐのだが、今回の話で実質的な主役となる彼女が中々にキュート。ほかほかのパイを片手にウォッチタワーにやって来たりします。兄譲りとも思える態度でJLAの前に立ちはだかるものの、そのモチベーションは完全に異なる。個人的な推測だがモデルはAUTHORITYのJenny Sparksではないかと。Supermanを始めとした旧来のスーパーヒーローのモデルを完全に否定していたSparksと違い、JLAのようなチームに存在意義を見出しているVeraは私のようにAUTHORITYをスーパーヒーロー物としては頂点だと思いつつ、だが古き良きヒーロー像も捨てきれないような読者にはジャストミート。

 既に伝統芸能の域に達しつつある”スーパーヒーロー”という存在。古来からの形を頑なに守ろうとする保守派と、最低限のものだけ残して時代の潮流に乗ろうとする革新派とが分岐するのはある意味当然とも言える。
 しかし、他の多くの伝統文化がそうであるように、真の発展というのはそのどちらかが勝った時ではなく、両方の良さを折衷させた時にこそ起こる。
 新たなシリーズのプロローグでもある本作のエンディングではスーパーヒーローの新たな可能性が提示される。
 この後の展開が楽しみであると同時に、ヒーローの時代性というものについて諸々考えさせられる1話。


同上(Amazon): Justice League Elite: VOL 01