THOR BY J. MICHAEL STRACZYNSKI VOL.1 (Marvel, 2013)

　紆余曲折を経てしばりリンボ入りしていた Mavel の雷神様。いない間に自分の髪の毛からクローンなんて作られちゃ堪らんわいとばかりに復活。

キンドル分冊版(Amazon): Thor (2007-2011) #1

　Asgard の崩壊と共に長らく地上から姿を消していた Thor だったが、もう1人の自分 Donald Blake の説得により休眠状態を終え、 Asgard を再建する決意を固める。手始めにオクラホマの広大な土地へ城を建てた彼は次に人間たちの中に隠れている Asgard の神々を目覚めさせるべく飛び立つ。だが彼はこの新生 Asgard にさえ既に魔の手が忍び寄っていることをまだ知る由もなかった……。

　何気にTHOR って読むの初めてです。 AVENGERS なんかで見かけることはあったものの、何かこの手の現代に神様が降臨するファンタジーって射程外というか。そもそもファンタジーってあまり受け付けないんで。ただ、ここ数年の間で Jack Kirby の NEW GODS 読んだり Wonder Woman 読み始めたりしてるし、そろそろ Marvel の神話系も1つくらい読んでおいても良いかと思い、手に取った次第。
　とは言うものの、Thorのように長い歴史を持つキャラクターに関してまさかデビューしたJOURNEY INTO MYSTERY #83 から読むのも億劫。もっと言うと Thor って Grant Morrison による X-men とか Dan Slott による Spider-man みたいに「読むならここから」的な地点がいまいちぱっとしない。何、 Aaron のランから読めばいいの？それとも Gillen の？ Fraction の？
　そんなこんなで遡り遡り、最終的に CIVIL WAR 直後に Thor が地上に復活を果たすこの J. Michael Straczynski のランからという運びになったわけで(というかこれ以前の話は Ragnarok 関連とか興味こそあったものの合本が手に入れ難くなっていた)。
　とりあえず Thor が Asgard の神々と共にしばし姿を消していたことと、 CIVIL WAR で Ironman らが彼のクローンを使って色々やらかしちゃったということだけ踏まえてりゃ十分読めました。

　J. Michael Straczynski と言えばコミックのみならず映画などでも秀逸な作品を世に送り出しているやり手のライター。しかし、 Marvel の AMAZING SPIDER-MAN や DC の SUPERMAN: EARTH-ONE など多くの名作も手がけている一方、 New52 直前の DC における SUPERMAN と WONDER WOMAN は散々だったりと中々にムラがある御仁。
　さて本作はというところだが、ご安心あれ。こちらは良い(？) JMS 。再び地上に降り立った Thor が CIVIL WAR やハリケーン・カトリーナなどですっかり変わってしまった米国(ひいては世界)に戸惑いを覚えたり、 Asgard 再建にあたり自分の選んだ者だけを復活させるかそれともLokiのような悪も蘇らせるか悩んだりするドラマ・パートも丁寧なら、 Marvel ユニバースで1，2を争うパワーハウスの彼ならではのド派手な戦闘シーンも盛り沢山。ここから読み始めて正解だったと思えるストーリーに仕上がっている。

　また、 Olivier Coipel のアートも忘れてはならない。彼のアートはアクションが派手なのは勿論、それに加え登場人物達の表情にも独特の優しさが漂う。非常に好感の持てる造型。何もないオクラホマの大地にそびえる Asgard の城も格好いい。

　結論から言えば本作はストーリー、アート共に大変密度の高い作品に仕上がっている。実写映画第3弾の公開にあたり Thor を読み始めたいという方はここから始めるのがおすすめです。

キンドル分冊版(Amazon): Thor (2007-2011) #2