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DIVNITY Ⅱ (Valiant, 2016)

 前作が21世紀版Dr. Manhattanの到来を描いた作品ならば、本作は米国のDr. Manhattan V.S. ロシアのDr. Manhattanであり21世紀のDr. Manhattan V.S. 20世紀のDr. Manhattanといえるだろう。


原書合本版(Amazon): Divinity II

 旧ソ連時代の秘密任務で”宇宙の果て”を目指し旅立った三人の宇宙飛行士達。辿り着いた先で謎の存在と接触したことにより時空を超越した存在に変化を遂げたAbram Adamsが地球へ帰還する一方、残された2人はこの世のものとは思えぬ世界を彷徨う。やがて一か八かAbramと同じ存在となることでこの場所からの脱出を図ったValentina Volkovは、狂気に陥った同士Kazmirの肉体を利用して地球への帰還に成功する。だが自分達が空へ飛び立ってから数十年が経過していたそこに祖国はもうなかった。ロシアのあるべき姿を取り戻そうと力を使い始めたValentina。MI6は唯一彼女に対抗できる力を持つAbram — Divinityに力を貸すよう求めるが……。

 引き続き新生Valiantからお送りするDivinityシリーズ第2弾。前回はAbramの帰還に端を発した序章ということでしたが、今回は彼と同様の力を備えた新たなる超人が地球へやってきたことにより文字通り時空を越えた戦いが繰り広げられます。今回ばかりはValiantユニバースのJLやAvengersに当たるチームUnityもほぼ出番なし(アクションシーンあるのNinjakくらいか)。後方で事態を見守っているような状態ですが、まあ何しろ彼らにはDivinity達が時空をどれだけしっちゃかめっちゃかにしようとその変化には気付けないわけで……。Divinityを前にした諜報部員(?)のビビりっぷりも頷けます。


分冊キンドル版(Amazon): Divinity II #3: Digital Exclusives Edition

 
 本作の主役であるDivinity含め宇宙飛行士の3人はソ連出身。とは言うものの前回はその割にソ連の匂いが希薄だったので「別にこれNASAの宇宙飛行士で良かったんじゃね?」と思っていたところ、今回は#1でVladimir Putin、#2でJoseph Stalin、さらに#3ではMikhail Gorbachevなど20世紀から現代にかけての著名なロシアのポリティシャンがこれでもかと出演しております(プーチン出して大丈夫なのか?)。

 共産主義のイデオロギーで真っ赤に染まったValentinaが力を使って今はなきソ連を復活させようとするのと、それに対してDivinityが「神に等しい力を持っていても人としての心を持っている限り私達は時間を捻じ曲げることはできない」と反論する辺りなどは国柄が出ているというか、色々と考えさせられるシーン。実際の所業はどうあれ米国とロシア、互いの国が立脚している思想のような滲んでいるような気がしないでもない。

 最終的に2人の対決がどうなるかはある程度こういう”圧倒的な力を持つ存在同士の戦闘”を見慣れている読者なら予想するのはそう難しくないものの(無論そこまで単純ではないけれど)、本作に関してはそこへ辿り着くまでの過程において台詞やアートの面で心惹かれる部分が多数見受けられた。とりわけアートに関しては異次元の描写やソ連周辺の描写などでかなり色々と練り込まれていることが見て取れる。

 ”超人”という単語に”人”の文字が入っていることを忘れてはならない。
 本シリーズはその意味における”超人”という可能性の新たな形を模索しているという点で続く第3弾も注目に値する。